第5話【代償と進化の理(ことわり)】
豪華なドレスに身を包み、アルフレッド様の熱すぎる視線から逃れるように窓辺に立った私は、ふと夜空を見上げて自問した。
(ラルム……。それが、今の私の名前)
けれど、考えれば考えるほど、この状況は謎に満ちている。
「なぜ、私はこの世界に導かれたんだろう?」
ただのラノベ好きの女子高生だった私が、なぜ。
そして、なぜ自分の本当の名前と引き換えに、あのメタすぎる固有スキル【物語の主人公=お約束】を得たのか。
(『お約束』……それは、私がこの世界で死なないための守護。でも、名前という『自分を証明するもの』を代償にするなんて、まるでもう二度と元の世界には戻さないと言われているみたい……)
さらに、謎は深まる。
アルフレッド様から「ラルム」という名を与えられた瞬間、私の身体は進化し、新たな固有スキル【綴る者】が発現した。
「名前を得ることで、私はこの世界の住人として『確定』しちゃったのかな……?」
名もなき異邦人から、この世界の物語を紡ぐ「綴る者」へ。
進化して大人びた自分の手を見つめる。
もしかして、このスキルは私が「妄想」していた物語を、ただの空想ではなく「現実」に変えてしまう力なんじゃ――。
「ラルム? どうしたんだ、そんなに難しい顔をして。……まさか、またどこかへ消えてしまおうなんて考えていないだろうな?」
背後から、アルフレッド様の少し不安げな、それでいて執着の混じった声が聞こえた。
振り返れば、そこには私を片時も離したくないと言わんばかりの、美しくも切実な瞳がある。
(……この人がいる。セバスチャンさんも、フェンリルちゃんも。この『お約束』だらけの世界で、私が何を『綴って』いくべきなのか。今はまだ分からないけれど……)
私は、少しだけ色香の増した唇をキュッと結び、自分に言い聞かせた。
この謎だらけの運命すら、最高のハッピーエンドに書き換えてやるんだから!




