第2話:判明した驚愕のスキル
マントにぐるぐる巻きにされた不審者スタイルのまま、私はアルフレッド伯爵と執事のセバスチャンさんに連れられ、屋敷の奥にある「鑑定の間」へとやってきた。
部屋の中央には、いかにも「異世界です」と言わんばかりの巨大な水晶が鎮座している。
セバスチャンさんが、眼鏡の奥の瞳を真剣に光らせて語り始めた。
「お嬢様。この世界では、魂の形が『スキル』として現れます。貴女がなぜこの地へ現れたのか、その理もこれで判明するでしょう」
「……案ずるな。たとえ何が出てこようと、私が一生かけて守ってやる」
アルフレッド様の「守る」が重すぎて、物理的に肩が凝りそうだ。
(いや、名前も知らない女子高生に一生を捧げないでくださいよ、伯爵様!)
私は震える手で、恐る恐る水晶に触れた。
すると、水晶の中から眩いばかりの金色の文字が浮かび上がる。
【固有スキル:物語の主人公】
【効果:運命の強制執行。絶体絶命の際、必ず『お約束』が発動し、救済がもたらされる】
「な、なんですか……この、メタすぎるスキルは……?」
ポカンとする私とは対照的に、アルフレッド様はハッと息を呑んだ。
「……物語の、主人公……!? 伝説の古文書にある、世界を愛と光で満たすという唯一無二の至高存在のことか……!」
伯爵様の目が、もはや崇拝に近い光を帯びてキラキラし始めた。
(いや、たぶん違う! 絶対に違う! それ、私が現実世界でラノベを読みすぎて、脳内がラノベ化した結果の末期症状スキルだと思う!)
私が心の中で全力のツッコミを入れていた、その時だった。
突然、部屋の天井がみしりと鳴り、豪華なシャンデリアがガタガタと激しく揺れ始めた。
「危ないっ!」
老朽化か、それともスキルのせいか。
巨大なシャンデリアが、狙い澄ましたかのように私の真上へ落下してくる。
(ひぃぃぃ! 転移初日にシャンデリアの下敷きとか、笑えないんですけどぉぉぉ!)
ギュッ、と目を瞑り、死を覚悟した瞬間。
ドォォン!!
凄まじい衝撃音と共に、私は温かな「誰かの腕の中」にいた。
「……ケガはないか? 私の愛おしい主人公」
おそるおそる目を開けると、そこには……。
抜いたばかりの剣を片手に持ち、真っ二つになったシャンデリアの破片を背に、私を完璧な角度で抱きとめるアルフレッド様のドヤ顔があった。
(出たぁぁぁぁぁ!! スキル『お約束:落下物をイケメンが斬り捨ててお姫様抱っこ』が強制発動したぁぁぁ!!)
「これからは、一分一秒たりとも私の側を離れるな。……運命が、そう言っている」
「……あ、はい(あー、これ、絶対に帰してくれないやつだ……)」
私の異世界生活は、本人の意思に関係なく「強制ヒロインルート」に突入してしまったようです。




