第1.5話:目覚めたら推し似の伯爵様に「責任」を迫られていました
第一話:目覚めたら推し似の伯爵様に「責任」を迫られていました
「し、失礼した! ……だが、見てしまった以上、貴女の純潔には私が責任を持つ! 必ずだ!」
嵐のような宣言を残し、銀髪の超絶美形――アルフレッド伯爵が部屋を飛び出していった。
静まり返る豪華な寝室。私はベッドの上で、虹色の「うさ耳もふもふパジャマ」姿のまま固まっていた。
(……え? いま、責任取るって言った? 私、まだ名前も名乗ってないんですけどぉぉぉ!?)
呆然としていると、控えめなノックの音と共に、品の良い老紳士が入ってきた。
「失礼いたします。……おや、これはなんと愛らしい(?)お召し物で」
「ひぃっ、すみません変な格好で!」
「ほっほっほ。旦那様が顔を真っ赤にして『直ちに客間の用意を!』と叫んで走っていかれましたよ。あのような動揺した旦那様を見るのは、おむつが取れた日以来ですな」
「お、おむつ……」
クールな伯爵様の意外すぎる黒歴史(?)をゲットしてしまった。
老執事がお茶の用意に下がった、その直後だった。
ババン!! と乱暴に扉が開く。
「ちょっとあんた! 旦那様をたぶらかしたってのはどこの馬の骨よ!」
現れたのは、これまた「お約束」な意地悪メイドさん。
「ひぇっ、ごめんなさい!」
「なによその格好! 貧乏人のピエロ!? 髪に変な団子付いてるし! さっさと出ていきなさいよ!」
メイドさんが私の腕を掴もうとした、その時。
窓ガラスがガタガタと揺れ、スッと「何か」が壁をすり抜けて入ってきた。
「「えっ?」」
「キュウゥゥゥ!」
キラキラと光り輝く、真っ白なフェレットのような小動物。
その聖獣はメイドさんを無視して、私の頭めがけてダイブしてきた!
狙いは、髪を巻いているボンボン。
「モフッ! モフフッ!」
「わああっ、くすぐったい!」
「ひぃぃっ! そ、それは伝説の聖獣フェンリル様!? なんでそんな小娘に……!? 噛み殺されるぅぅ!」
メイドさんは腰を抜かして逃げ出した。
残されたのは、もふもふパジャマの私と、頭に乗ったもふもふ聖獣。
……いや、この子、ただ私のボンボンを仲間だと思ってるだけじゃ……。
「きゅぅ〜♪」
満足したのか、聖獣は頭から降りると、今度は私の胸元へ。
ボタンが弾け飛んで開いているパジャマの隙間に、あろうことか頭を突っ込もうとしてきたのだ!
(ひゃあ! そこはダメぇぇ! いくら可愛くてもノーブラなんですぅぅ!)
「こら! ダメだってば!」
私が必死に聖獣を引き剥がそうとした、その瞬間。
「貴様ァァァ!! 離れろッ!!」
ドォォン!! と扉が蹴破られた。
そこには、着替えのドレスを抱え、なぜか抜き身の剣を握りしめた伯爵様が立っていた。
「ひぃっ!? 伯爵様!?」
「私の! い、愛しの婚約者(予定)の胸元に……! たかが聖獣風情が何をしようとしている!!」
伯爵様の目は血走っている。殺気がすごい。
「きゅ?」
首を傾げる聖獣。その無邪気さが、さらに火に油を注いだ。
「ええい、斬る! そのふざけた毛玉を斬り捨てて、私がそのふわふわな場所に代わりに入る!!」
「……えっ? 今なんて言いました?」
「ッ! い、いや! なんでもない! とにかく離れなさい!」
伯爵様は剣を放り投げると、私と聖獣の間に割って入り、私をマントでぐるぐる巻きにして抱きしめた。
「……君の肌とパジャマに触れていいのは、責任を取る私だけだ」
耳元で囁かれる甘い低音ボイス。
心臓が跳ねる。推しに抱きしめられるなんて、妄想以上なんだけど……。
でも伯爵様。私、やっぱりまだ名前も名乗ってないんですぅぅぅ!!




