58/58
五十八話 名前を残す庭 (完)
聖女装束を来たルーナが笑っている。
「いつもと変わらない気がします」
場所は暁光神殿ではない。
神の庭。
雲海の上にあるそれは遥かな高みに浮いている。
「アルトさん」
鎧ではない、神の装束を身につけたアルトだったものにルーナは呼びかけた。
「あ、もうアルトさんじゃないんでしたっけ?」
いいえ、と彼は首を振った。
「そう呼んでください。あなたにその名前で呼ばれなくなるのは、寂しい」
寂しいんですか? とルーナが首を傾げると、アルトは苦笑した。
「あなたも、そうでしょう?」
言うとルーナも頷いた。
「はい。寂しいです」
ルーナは、左手の薬指を撫でた。
二人の手には、人間だった頃に嵌めた誓いの指輪が揃って光っていた。




