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五十六話 沈黙の了承
ルーナ暁光神殿に着くと、既にヴェロニカが到着していた。
ヴェロニカは神殿長の前に立っている。
「ルーナ、こちらに来なさい」
ヴェロニカに呼ばれていくと、そのまま彼女は神殿長に言い放った。
「私、聖女を降りるわ」
ざわめきが広がる。
「これ、ヴェロニカ」
老神官が言った。
「巡礼が終わったであろう日、神官という神官が聖女の誕生を確信したのだ。それを……」
「だからよ」
彼女はばっさりと切り捨てた。
「私は書庫から出された。経典なんて見てないわ」
「これ!」
慌てて止めようとするがもう遅い。
「神殿長様ならお分かりになりますでしょう?」
「……神器を回るのが聖女の勤めだ。ヴェロニカよ、お前が経典に出会わなかったと言うなら」
周りの視線が一気にルーナに集まる。
「ルーナ。神器は巡ったか?」
問いは簡素だった。
「はい。……とても良い経験をさせていただきました」
ふう、と神殿長はため息をついた。
「聖女ルーナ。励みなさい」
誰も何も言わなかった。
聖女が誕生したこと、それだけは、神官達の中の真実だったから。
沈黙こそが、了承だった。
ルーナは深く頭を下げた。




