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五十三話 書庫の外へ
気づいたとき、
ヴェロニカは書庫の外に立っていた。
石の床。
冷たい空気。
空の上に、微かに光。
迷っていたはずだった。
方向も、距離も、分からなくなっていた。
それなのに――
出ている。
「……?」
聖匙は、まだ手の中にあった。
神官が、少し遅れて合流する。
息を整えながら、書庫を振り返った。
「……巡礼は、ここまででしょう」
ヴェロニカは、すぐに問い返せなかった。
「どうして?
だってまだ」
焦りが言葉になる。
「わかるのですよ。終わった、と」
「書庫が、もう応えません」
神官は書庫に向けて祈った。
ヴェロニカは呆然と書庫を見上げた。
書庫に必要とされなかった?
悔しくて唇を噛む。
けれど、それが事実だと
書庫から出られたことが示していた。




