51/58
五十一話 浮かぶ聖典
それは、台座の上に浮かんでいた。
触れていない。
支えられてもいない。
台座とのあいだに、ほんのわずかな空間があり、
そこに淡い光が満ちている。
眩しさはない。
けれど、目を逸らそうとは思わなかった。
ルーナは、その前で立ち尽くした。
これは、書物だった。
けれど、誰かが書いたものではない。
祈る言葉は出てこない。
願う必要もなかった。
ただ――
ここにいることを、拒まれていない。
それが、はっきりと分かった。
(今、そうしなければ)
ルーナは、自然とそう思った。
そして祈りの形に手を組み合わせる。
光が一瞬強くなった。
理が身体に流れ込んでくる。
ルーナは、自分が繋がったと、感じた。




