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五十話 眠るという許可
目を覚ましたのは、ルーナだけだった。
扉にもたれたまま、姿勢は変わっていない。
周囲の気配も、音も、眠る前と同じだった。
けれど――
違っていた。
ここにいていい、という感覚が、
眠る前より、はっきりしている。
扉は、相変わらず閉じていた。
鍵穴もある。
取っ手もある。
それでも、もう「扉」だとは思えなかった。
ルーナは立ち上がった。
押そうとも、開こうとも思わない。
ただ、そこに足を向ける。
一歩。
石の感触が変わる。
気づいたときには、
もう、向こう側にいた。




