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第9話 夢見る脳髄 その3

 訪れた境界域で空を見上げた理久は息をのむ。

「なんだこれ」

 太陽のない青空だった空中にはあちこちに虫食い穴のような黒い円が浮いていた。

 目を凝らすと円の中でなにかがうごめいているのがかすかに見える。

「これは……卵?」

 つぶやく理久に背後から小雪が答える。

「違うにゃん。その黒い所はイヤユメ世界とつながってるんだにゃん」

 振り向くとそこには戦闘態勢のフェアレーヌ5――のうちの四人が立っていた。

 個室にいた時には意識しなかったが、改めて見るミニドレスから伸びる長い足を包むロングブーツ姿で佇む四人の姿は、背景の虫食い穴だらけの空とクレーターだらけの荒野によく映えている。

 現実世界ではいわゆるコスプレにしか見えない“違和感の塊”だが、光景自体が異質である境界域においては戦闘少女集団の存在そのものに説得力があった。

 そう考えると、現実世界あっちでも境界域こっちでも同じ学校制服の自分がなにかまちがっているような気がしてくる。

 だからといってミニスカートを穿こうとは思わないけれど……。

 そんなことを考えるのは、理久の脳が“最終決戦の場に、常人であるにもかかわらず呼び出されたことから来る緊張感を無意識に回避しようとしている”からかもしれない。

 ちなみに中指だから背が高いのかもしれないと思っていた颯は、中指じゃなくなっても背が高かったし、小指だから小柄なのかもしれないと思っていた瑠奈は、小指じゃなくなっても小柄だった。

 他に目立つところでは、薬指当時は気付かなかった“綺羅が――大人の冰雨や夜霧を上回るほどの――巨乳だった”ということくらいだが、そんなことを気にしている場合ではないと、理久はクレーターの荒れ地に目を移す。

 どこにもクリスタルメーカーの姿は――これまでずっとくねくねと躍っていた触手すらも――見当たらない。

 その時、大地が揺れた。

 よろめいて耐えきれずぺたりと座り込む瑠奈、さすがの体幹で立ち尽くす颯、ふたりをかばおうとする綺羅、そして、状況を解析する小雪。

「クリスタルメーカーだにゃんっ」

 理久の眼前で隆起した大地を割って起き上がったのは巨大なイカ形状に最終進化を遂げたクリスタルメーカー。

「出たっ」

 思わず叫ぶ理久へとクリスタルメーカーが触手を向ける。

 その触手へ理久が呪能砲を放つ。

 が、例によって触手を弾き飛ばすくらいの威力しかない。

 舌打ちする理久の背後から――

「なんてことありませんわ」

 ――綺羅が飛び出し、躍る触手を空中で掴む。

 そして、そのまま身体を反転させて背負い投げの態勢から触手を引きちぎる。

 さらに、左右から向かってくる触手を、ずっとおどおどしていた颯が回し蹴りを、ずっとおとなしかった瑠奈が手刀で切り飛ばす。

 呆然とする理久のかたわらで、小雪が得意げに胸を張る。

「これが小雪たちの本来の能力ちからだにゃん」

 そこへ背後からそっと伸びていた一本の触手が理久を捕らえた。

「え、ちょ」

「しまったにゃん」

 小雪が飛びかかろうとした時、クリスタルメーカーの胴部で斑紋が凝集して少女の顔を描く。

 その顔は――碧海!

「碧海っ」

「碧海ちゃんだにゃん」

 名を呼ぶ理久と小雪になにも答えず、直後に斑紋は拡散する。

 なぜ、このタイミングで碧海が……?

 戸惑う理久に巻き付いた触手が猛烈な速さで理久の身体をクリスタルメーカーの下方へと引っ張り込む。

 そして――

「理久っ」

 ――小雪の悲鳴を聞きながら、理久はクチバシの奥へと飲み込まれていった。

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