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第7話 現れた最終態と明かした本心 その2

 “なにはさておき、宵闇がやった方法で五人を理久の指から解放する。”

 それが今回の境界域潜入の目的だった。

 ソラの救出も碧海の捜索も、そして、クリスタルメーカーや慄冽や宵闇や、さらに残ったト・ドゥーフ剣ナンバー四七を倒すのも、フェアレーヌ5の完全復活を成してからの話だった。

 しかし――。

 境界域には入ったものの目的地である“触手の存在する座標”までの手前には巨大な障壁がそびえ立って理久たちの進路を阻んでいた。

 理久がつぶやく。

「……なんだこれ」

 華穂が見上げる。

「おっきー。てっぺんが見えないねえ」

 瑠奈が困惑する。

「こんなの今まで一度もなかったのに」

 颯がおどおどと周囲を窺う。

「どこかに隠れてて、いきなり襲いかかってくるとか……」

 小雪が推測する。

「というよりも、時間を稼ぎたいのか、あるいは、絶対にこの先へ入れたくないのかのどっちかだにゃん」

 綺羅が吐き捨てる。

「こんなのぶっ壊すまでですわ」

 六人は突如現れた巨大障壁にそれぞれの表情を浮かべる。

 とりあえずとばかりに理久が思いっきり蹴ってみる。

 当然のように障壁はびくともしない。

ってーな。とりあえず撃ってみるか」

 一旦、背を向けて距離をとる理久を華穂が煽る。

「撃っちゃえ、撃っちゃえ」

「よおしっ、発射っ」

 理久の突きだした手のひらから呪能砲が撃ち出される。

 が、その弾影は障壁の正面で弾けて消え、傷ひとつ残せない。

 忌々しげに舌打ちする理久に綺羅が声を掛ける。

「私がやってみますわ」

 しかし、小雪が止める。

「綺羅ちゃんの爆裂型は全方位型だからここで使うのはもったいない気がするにゃん」

 理久はその言葉に、綺羅とともに放った爆裂型呪能砲を思い出す。

 確かにイヤユメ元素で作られたものを消し飛ばす威力があるものの、正面で動かない障壁相手に使うには適材とは言い難い。

 なによりもこれまで見てきた通り、原則としてひとり一回しか撃てないとなればなおのこと効果的な選択をしなければならない。

「もっと一点突破型の方がいいよなあ」

 ひとりごちる理久の言葉に華穂も頷く。

「だねー。じゃあ、あたしの拡散型と――」

 そこまで言って小雪を見る。

 その意を察した小雪が続ける。

「小雪の誘導型も温存しといた方がいいにゃん」

 綺羅がため息。

「確かに言えますわね。この先に待ってるものがどんなものかもわかってないことですし」

 その言葉に理久も口に出して思考を整理する。

「残っている相手は慄冽と宵闇とクリスタルメーカーとト・ドゥーフ剣ナンバー四七。こいつらが束になってかかってくる可能性もあるしな」

 今回の目的はあくまでも“フェアレーヌ5を理久の左手から解放すること”である。

 それを最優先とする以上は可能な限り戦闘を回避したい。

 とはいえ、慄冽たちの抵抗に遭えばそんなことも言っていられない。

 というよりも、これまでの経緯から考えて慄冽たちがなにもしてこないわけがない。

 さらにト・ドゥーフ剣ナンバー四七の能力もわかってない。

 それらを考えれば綺羅の爆裂型こそ最後まで温存すべきだろうし、複数を相手にする可能性を考えれば華穂の拡散型も残したい。

 さらに機動力に優れる小雪の誘導型は動かない壁相手に使うのはもったいなさすぎる。

 理久はそんなことを考えながら五本の指を見下ろす。

「じゃあ、残ってるのは……」

 颯が理久から目を逸らすのと同時に瑠奈が手を挙げた。

「あの……私が、やってみていいですか」

 華穂が声を上げる。

「あ、いいかも」

 続いて小雪。

「確かに一点突破には向いてるにゃん」

 さらに颯。

「瑠奈ちゃんなら……うん」

 そして綺羅。

「お願いしますわ」

 理久だけが瑠奈の呪EL銃を知らない。

「瑠奈ちゃんのはどんな……」

 答えたのは華穂。

「大丈夫だよ。信用して。さあ早く」

 瑠奈の呪EL銃を知る華穂が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。

 “なにも知らない自分が迷う必要はない”と開き直りにも近い感覚で理久は瑠奈に声を掛ける。

「じゃあ、撃つよ。いい?」

 瑠奈の一点の曇りもない澄んだ大きな瞳が理久を見る。

「はい。お願いします」

 改めて理久が呪能砲を撃つ。

 しかし、理久が単独で撃つ“通常弾”と同様になんの変化も見せず、隔壁表面で弾けて消える。

 理久が戸惑う。

「終わり? 通常弾? 意味ない? 不発? どうなってんだ?」

 初めて小雪との誘導型呪能砲を撃った時と同じような理久の反応に、華穂と小雪がくすくすと笑う。

 颯は祈るように両手を組み、綺羅は自信ありげに腕を組んでそれぞれが障壁を見ている。

 そこで理久は左手に違和感を覚える。

 呪能砲を撃ち出す寸前に感じるかすかな痺れにも似た感覚を。

 また……出る?

 慌てて左手を隔壁へ向ける。

 同時に理久の意思とは無関係に、新たな呪能砲が撃ち出される。

 うろたえる理久の――

「いや、ちょっと……。もしかして、これって」

 ――左手から次々と呪能砲が撃ち出されていく。

 その様子に理久が瑠奈の呪EL銃を理解した時、華穂が声を上げる。

「これが瑠奈ちゃんの連射型呪EL銃、連射型呪能砲だよ」

 理久は発射の反動を堪えながら姿勢を固定し、呪能砲の着弾点を障壁の一点に集中させる。

 次々と撃ち出され、隔壁表面で弾ける呪能砲に小雪がツインテールを躍らせながら声を上げる。

「そのまま一点突破だにゃん、いえいいえい」

 やがて隔壁に亀裂が走る。

 綺羅がつぶやく。

「成功ですわ」

 六人の見ている前で障壁の一画がガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

 その向こうには変わらぬ荒野と、復活した十本の触手がくねくねと揺れている。

 そして、触手のもとで慄冽と宵闇――さらに四七振り目のト・ドゥーフ剣が強い光を放ちながら浮遊して、理久たちの到着を待っている。

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