第7話 現れた最終態と明かした本心 その1
「ついに、終わった、のね」
ささやく宵闇へ、索漠はロングコートを羽織った球体越しに空を見上げる。
「ああ、終わったんだぜ。見ろよ、あの接触面を」
境界域の真っ青な空中にいくつもの黒い円が次々と現れて拡大していく。
目を凝らせば見える“円の中でうごめいているもの”に索漠は不気味な笑みを浮かべる。
「あとはそれぞれの接触面が拡大して重なり合うことで、この境界域はイヤユメ時空と地続きになるんだぜ。その最大の功労者がこのオレサマなんだぜ」
「そして、私、が、その妻、と、いうこと、ね?」
「もちろんだぜ」
索漠は宵闇を抱き寄せて顔を覗き込む。
目の位置で淡い光を放つ波形表示を走る波形が一瞬だけ大きく振れた。
「その機械の面ももういらないんだぜ。オレはとっくにオマエの正体に気付いてるんだぜ」
宵闇がふっと顔を伏せる。
「おそれ、いった。さすが、索漠」
そこへ声を掛ける者がいる。
「ところで索漠さま、ぶくぶく」
振り向くとタカアシガニの慄冽がいた。
索漠は宵闇の腰に手を回したまま慄冽に向き直る。
「“フェアレーヌ殲滅プロジェクト”終了の報告書作りと記念式典の企画書はどうなったんだぜ?」
「そのことざますが、索漠さま――」
「――そろそろ目を覚ましてはいかがざますか、ぶくぶく」
さまざまな機械や実験器具が乱雑に置かれている部屋の中央で、テーブルに置いたガラス容器にタカアシガニの慄冽が話しかける。
「夢から覚めた気分はどうざますか、索漠。ぶくぶく」
「……」
「索漠の身体は綺羅の放った爆裂弾で蒸発して消えたざます、ぶくぶく」
「……」
「でも、まあ、今回の一連の流れは索漠にも責任があるのは言うまでもないざますね、ぶくぶく」
「……」
「もしかして、納得いかないとか思ってるのざますか? ぶくぶく。でも、そもそも、最初に索漠がナンバー四五と一緒に“あっちの世界”へ華穂を追いかけていったことからすべては始まってるのざますよ、ぶくぶく」
「……」
「あの時、私と宵闇は言ったざます。逃げたのは華穂ひとり、イヤでも結晶化させた四人を奪還しに戻ってくる。それを待ち伏せしようって、ぶくぶく。でも、索漠は聞かなかったざますね。結晶化させた小雪を利用することでナンバー四五とともに“あっちの世界”との行き来が可能になる。それを利用することで華穂を連れ戻して、結晶化させてやるって、ぶくぶく」
「……」
「宵闇にかっこいいとこ見せようとして“あっちの世界”へ乗り込んだまではよかったものの、銃撃されて逃げ帰ってくるわ、ナンバー四五は失うわ、一番やっかいなナビの小雪を奪回されるわ、さんざんざます、ぶくぶく」
「……」
「華穂の放った拡散弾で瀕死になった身体から脳髄を摘出して、代わりにクローン培養した簡易脳髄を背負わせてみたけれど、その身体もさっき言った通り、綺羅の爆裂弾によって蒸発したざます、ぶくぶく」
「……」
「ということで、そんな索漠に“新しい身体”を用意してあげたざます、ぶくぶく」
「……」
「フェアレーヌ5の全員を奪還されたのも、元を正せば索漠の暴走からざます。その責任をとってもらうざます、ぶくぶく。この“新しい身体”で、今度こそフェアレーヌ全員を結晶化させるという形でね、ぶくぶく」
「……」




