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第6話 突撃! お宅訪問隊 その2

 あっさり告げられた思わぬ言葉に華穂、颯、綺羅、瑠奈、そして、理久が一斉に小雪を見る。

 中でも特に食いついたのは颯。

「ヒント? わかったの? 戻る方法が?」

 それまでの一歩退いたおどおど感から別人のように前へ出る颯に、小雪がすこし退き気味に返す。

「宵闇がやったことがそのまんまヒントだにゃん」

「お待たせしたっす」

 そこへ機械を積んだ台車をごろごろと押しながら白衣の夜霧が入ってきた。

「準備できたっすよ」

 言いながら台車の機械と接続されているカラオケマイクをテーブルにごとりと置く。

 そして、理久の左手を見て声を掛ける。

「綺羅、瑠奈、颯――。みんな、容姿なりは変わったけど無事でなによりっす」

 綺羅はふてくされたような表情で、瑠奈ははにかみながら、颯は目を泳がせながらおどおどと頭を下げる。

 そんな三人とは無関係に、華穂がカラオケマイクへ興味津々な目を向ける。

「今度はなにやるの?」

「みんなが元の姿に戻るための準備っす」

 綺羅が“そうそう、さっきの話の続きですわっ”とばかりに改めて小雪を見る。

「宵闇がヒントとかおっしゃいましたけど?」

 そこへ華穂。

「あ、そっか。綺羅ちゃんは宵闇がやったこと見てないんだ」

 “?”と顔を向ける綺羅に続ける。

「最初に薬指になった宵闇が境界域でいろいろやって……それで綺羅ちゃんと入れ替わったんだよー」

「どういうことですの?」

 今度は小雪。

「つまり、一旦は薬指になった宵闇が元の姿に戻ってるんだにゃん。そのやり方を記憶してる小雪が今から出力して夜霧に解析してもらうのにゃん」

 言い終えると同時に夜霧がマイクを小雪の前へ転がす。

「じゃ始めるっすか」

「いつでもいいにゃん」

 理久までもが息を潜めて見つめる中で、小雪がマイクに向かってささやきかける。

 しかし、その声はかすかにしか聞こえない。

 時折、電子音に似た“ぴ”とか“ぷ”とか聞こえるくらいでなにを言ってるのかは理久にはわからない。

 小雪を除いた四人のフェアレーヌも真剣な表情で耳を澄ませてはいるが、その表情が逆に“聞こえていない音声を必死に聞き取ろうとしている”様子を表している。

 五分ほど経った頃、小雪がマイクから離れて夜霧を見上げた。

 小雪と夜霧は互いに見つめ合い、頷き合う。

 夜霧が機械のスイッチを切り、小雪が四人のフェアレーヌと理久を見渡す。

「終わったにゃん」

 しかし、誰ひとりとしてなにが始まっていたのかすら理解できず、ぽかん顔で小雪と夜霧を見比べる。

 代表して問い掛けたのは理久。

「終わったって……なにが?」

 夜霧が答える。

「小雪がマイクへ入力したのは“イヤユメ発声”っす。一音一音が多重構成になってて情報量が私たちの言語とは比較にならないくらい大きいっす。小雪が見たり聞いたりしたことをイヤユメ発声で音声化することでその様子を完璧に再現できるっす。わかったっすか?」

 理久と四人のフェアレーヌはわかったようなわかってないような曖昧な表情で頷いてみせる。

 原理はともかく“宵闇が境界域でやって見せたことを完璧に記録したデーター”を夜霧に引き渡したということなのだろう。

 そんなていどの理解でしかないが、理久たちにとっては“そんなていどの理解”で十分だった。

 夜霧がテーブル上のマイクをしまいながら続ける。

「で、このデーターを解析して宵闇がやったことを取捨選択、推理推察、整理分類すれば“元の姿に戻るためのマニュアル”を再構築できるということっす」

 そして、冰雨を見る。

「結果は明日の夜くらいっすね」

 その言葉に“そういや今は何時なんだ”と理久はベッド脇に置かれた時計を見る。

 夜の九時を過ぎたくらいだった。

 綺羅が夜霧を見上げる。

「じゃあ、それ以降には元の姿に戻れるんですの?」

「戻れるっすよ。解析結果を元に境界域で宵闇がやったことをそのまま再現すれば……。慄冽や宵闇の妨害次第っすけど」

 サムズアップで答える夜霧に五本の指が歓声を上げる。

 その様子を微笑ましげに見ている冰雨に――

「あの……あの」

 ――切羽詰まった声を掛けたのは瑠奈。

「なんでしょう?」

 優しい表情で首を傾げる冰雨へ、瑠奈は伏し目がちに答える。

「家の様子を見に行きたいんですけど。できるだけ早く。……ダメですか」

 冰雨の表情が戸惑った。

「今のその状態で、ですか?」

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