表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタファー-心の物語-  作者: 一月の山羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

泣き砂の浜で

その浜辺には、泣き砂があった。踏むと、かすかに「キュッ」と鳴る。


子どもの頃、母に連れて行かれた場所だった。

砂の音が、まるで心の声みたいで、ずっと覚えていた。


大人になって再び立ったその浜は、あの頃よりずっと広く感じた。

僕の胸の奥が広くなったのか、それとも、守っていたはずの何かがすっかり消えてしまったからなのか。


砂を踏むと、音がした。でもその音は、以前よりもずっと弱かった。


「僕の心も、こうやって鳴いていたのかな」


誰に言うでもなく呟いたら、波の音がゆっくり寄せてきて、まるで返事のように引いていった。


失ったものも、多かった。手に入れたものも、確かにあった。

でも、胸の奥にはずっと、説明のつかない小さな「痛み」が残っていた。


浜辺の端に座って空を見上げると、雲が流れていく。

その動きを目で追っていると、涙がひとつだけこぼれた。


泣くつもりなんてなかった。

けれど、その一粒が落ちた砂は、まるで応えるように、かすかに鳴いた。


あぁ、そうか。弱くなったんじゃない。

僕の泣き砂は、もう叫ばなくてよくなっただけなんだ。


踏みしめれば、「キュッ」と鳴る。そのかすかな音が、今の僕を肯定してくれる。


もう、泣いていいし、泣かなくてもいい。ただ、ここに立っているだけでいい。

そう思えたとき、潮の香りが、不思議とあたたかく感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ