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メタファー-心の物語-  作者: 一月の山羊


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8/12

風が止まったとき

あの日、風がぴたりと止んだ。窓を開けても、カーテンは微動だにしない。

いつも流れていたはずの時間が、唐突に、止まってしまったかのようだった。


その静けさは、最初心地よかった。雑音が消え、世界が柔らかくなったようで。


けれど、しばらくして気づいた。静けさは、安心ではなかった。

ただ、何も感じないだけだった。


喜びも、悲しみも、やる気も、焦りも。

まるで全部が、風と一緒にどこかへ行ってしまったようで。


その頃の僕は、たぶんもう限界だったんだ。

心のどこかで何かが折れて、風を吹かせる力を失っていた。


ある日、ベッドの上でぼんやり窓を眺めていたら、ふと胸の奥がチクリと痛んだ。

理由も分からず涙が出た。


その瞬間、ようやく気づいた。――何も感じないことが、一番つらかったのだと。


泣いたあと、窓を閉めようとして気づいた。カーテンの端が、ほんの少しだけ揺れていた。


風なんて吹いてないと思っていたけれど、本当はただ、僕が感じ取れていなかっただけなのかもしれない。


それから、ほんの少しずつ、温度や痛みや、人の言葉が戻ってきた。


全部を受け取る力はまだない。

でも、もう一度、風が吹くのを信じられるくらいには、僕は僕を取り戻してきた。


誰にも見えない微かな揺れが、生きている証のように思えた。

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