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風が名前を呼ぶ
風は、いつも先に気づいていた。
心の奥でこぼれた小さな痛みも、言葉にならない願いも、誰にも届かず沈んでいく想いも。
ある日、あなたがふと立ち止まったとき、ほんのかすかな風が頬を撫でた。
まるで、あなたの名前をそっと呼ぶように。
「そのままでいいよ」「まだ途中でもいい」「泣きたくなったら、泣いていい」
そんな声が、風の向こうから聴こえた気がした。
あなたは気づいていなかったかもしれない。
でも、風は知っていた。
あなたがずっと、ひとりで踏ん張ってきたことを。
誰にも見えない場所で、何度も心を立て直してきたことを。
だから風は、今日もあなたの周りをゆっくりと巡る。
何も変わらない日々のように見えても、ほんの小さな決意が胸に生まれた瞬間を、風は見逃さずに寄り添っている。
「もう少しだけ、前へ」そう背中を押すように。
耳を澄ませば、風がまた名前を呼ぶ。あなたが、あなたのままで歩けるように。




