六話
「はぁ、はぁ、要するに、五紀羨ましすぎだろこんちくしょうってことでいいよな?」
「はぁ、はぁ、そうだね、そこ代われ五紀ってことでいいと思う」
お互いの推しヒロインを熱弁していた俺たちは、気がつけば主人公が羨ましすぎるという結論に至っていた。
あまりに話に熱中しすぎて、気がつけばあたりは暗くなっていた。
時刻は七時前で、夜ご飯には丁度いい時間になっていたので、俺たちは近くのファミレスへと場所を移すことにした。
「やっぱいいなーこうやってアニメの話するのは」
「だよねー。何回やっても飽きないよね」
「春アニメも始まったばっかりだしどんどん話すネタが増えてくしな」
ファミレスに来てからもずっと止まることなくアニメの話をしていた俺たちは、語り合える仲間がいることの幸せを感じていた。
この前もかなりの時間話をしていて、飽きないのかと思われるかもしないが飽きるわけが無い。
むしろ、話せば話すほど次から次へと新しい作品の話題が出てきて話が加速する一方だ。
「新しい学年、新しいクラス、っていう環境がガラッと変わるこの春はさ、春アニメも結構そういう学園ものとか増えるじゃん?」
「確かにそんなイメージあるかもな」
「でしょ。で、それ見てなんかこういう生活憧れるーってなるんだよね」
「分かる。俺とか現実と理想のギャップにどれだけ泣かされたか」
「だよね。まぁでもうちの学校には雪音っていう学校一の美少女がいるからそう言ったところは男子の祐希にはありがたいんじゃないの?」
「あはは、まぁな」
突然出てきた名前に、俺は思わず苦笑いをしてしまう。
そんな俺の表情を見逃さなかった葵は、少し訝しげにこちらを見た。
「そういやさ、ちょっと気になってたんだけど」
「どうした?」
「祐希って雪音とどういう関係なの?」
「は?」
あまりに急な話題に俺は変な声を漏らしてしまった。
まぁ確かに、さっきの俺の反応は普通ではないだろう。
普通なら、諒太みたいに白河さんはまじ天使とか言うべきところではあったのだ。
しかしながらそれだけでそんな話になるとは思えないので、俺は話の真意を探ることにした。
「どうしたんだよ急に」
「いやさ、私雪音と仲良いじゃん?」
「そうだな、よく一緒にいるとこ見るし」
「見てたんだ」
「他意はねぇよ」
「ごめんごめん」
いちいち茶化してくる葵は軽く謝罪して話を続ける。
「でさ、この前本屋で祐希に会ってから気づいたんだけど、雪音と話してるとさ、あからさまに祐希の話題を避けてるんだよね」
「そもそもなんだよ俺の話題って」
「ほら、男子だってするでしょ?クラスの女子の話とか。あんな感じで女子もクラスの男子誰がいい?とか言うわけ」
「なるほどな。だったら諒太一択だろそんなの」
「まぁね。ほとんどの子は高坂君推しばっかりだけどね」
「だろ?」
「でも、次いで人気なのは安定して祐希なわけ」
「へーそれは世間が俺の魅力に追いついてきたってことだな」
俺がドヤっとすると、葵は苦笑いだけ送ってくれた。
反応に困るのはわかるがやられる方は辛いんだぞ。
と、葵は俺の照れ隠しには流石に茶化さずに本題に入った。
「まぁそれは置いといて、要はそんな感じで祐希の名前が出るんだけど、なんかその時だけ絶対に会話に入らないようにするって言うかさ」
「うーん別にとくに心当たりないけどな?」
「ほんとに?」
「俺高校入学してから学校で話したことないし」
「そっか。その話信じるなら私の勘違いかな?」
「だと思うけどな」
俺がそう後押しすると、葵はうんうんと頷きながら自分の考えを少しまとめていた。
嘘は言わなかった。
でも、葵には申し訳ないが、俺と雪音の関係は言えるはずがない。
言ってしまっては、俺の今までの努力が無駄になってしまうからだ。
やはりクラスの中心人物というのは考えることが多くて大変そうだ。
俺は目の前の真剣な表情の葵を見てつくづくそう思うのだった。
ファミレスに来て二時間ほど経った九時頃、俺たちはようやく話を終わらせて店を出た。
雪音の話はあれ以降特になく、またアニメの話をしていた。
「いやーやっぱこうやって語り合うのはいいね」
「だなー」
「出来れば毎日語り合いたいレベル」
「うーんやっぱり学校では話せないし定期的に会うしかないかもな」
「それいいじゃん!」
俺が何となく口にしたことに葵は驚くほど食いついた。
確かに俺と同じ熱量でこの会話を楽しんでくれていたことはすごく嬉しいが、それでもまさかそこまでだとは思っていなくて戸惑いを隠せない。
「毎週末さ、こうやってどっかで集まってアニメの話しあおうよ」
「別に俺は暇だからいいけどさ、葵はいいのかよ人気者は多忙だろ?」
「私の仲良い子はみんな部活入ってるから休日は基本暇だから大丈夫!」
「確かにうちの学校文武両道強調してる系だしな」
「そうそう。それにやっぱプライベートの時間は大切にしたい派だし」
さっき当てつけなのか、葵は既視感のあるドヤ顔でそういった。
まぁでも、関わりは少ないがそれでもわかる。
友達といる時間と、プライベートな時間、どちらも大切にしてきた人間なのだろうなと。
「そうと決まったら早速来週はいつにする?」
「うーん今日と同じで日曜でいいんじゃないか?」
「そうだね。一週間のオタ活の成果を思いっきり語り合えるしね」
「だな」
俺たちはそんな感じで毎週末集まる約束をした。
「じゃあまた来週だね」
「明日も学校で会うのに変な感じだな」
「これは私と君だけの秘密の関係なのだよ。なんてね」
「なんだそれ」
俺たちはそんなたわいもない話をして、並んで駅まで向かった。
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