四話
「おはよう、祐希」
「おう、おはよう諒太」
リアルのオタク友達ができた翌日、いつものように少しだけ早めに登校してぼーっとしていた俺に諒太が話しかけにきた。
「いやーやっぱクラスにお前がいると朝から安心するよ」
「それはそうかもな」
「祐希、お前ってやつは、とうとう俺を認めてくれたのか」
「その間抜け面見たら一発で目が覚めて授業に集中できそうだ」
「おい!」
俺の冗談に、テンポよくツッコミを入れる諒太。
流石、大阪の血は伊達じゃない。
俺たちが朝から戯れあっていると、教室がまた少し騒がしくなる。
勿論、俺たちをみてではない。
教室に入ってきた少女に視線が集まっているからだ。
「おはよう雪音」
「おはよう、葵ちゃん」
学園の二大美女が今日も今日とて笑顔で挨拶を交わす。
周りからすれば眼福この上ない光景だ。
俺がその様子をぼんやりと眺めていると、葵と一瞬目があった。
俺は咄嗟に目を逸らそうとしたが、葵は俺に気づくと周りにバレない程度で軽く手を振ってきた。
普通の男ならそんなことされたら一瞬で好きになってしまうだろう、間違いなく。
俺は周りにバレずに手を振るなんて器用なことはできないので、軽く会釈して視線を諒太に戻した。
「やっぱり人気だねー白河さんは」
「まぁな」
「白河さんと仲良い男なんてお前意外にいるのか?」
「知らないし、そもそも俺は仲良くはないし」
「え?そうなのか?」
「そうだよ。第一俺があいつと話してるとこなんて見たことあるのか?」
「うーん。確かにないな」
諒太は俺の言葉を聞いて少し考えるそぶりを見せてからそう言った。
幼馴染だからといって、別に仲がいいとは決まっていない。
決して悪いわけではないが、相手が自分よりも遥か彼方の人間なら話さなくなることなんて火を見るより明らかだ。
だから、俺は目立たないようにすると決めたんだ。
あいつのために。
「ま、白河さんはお前に譲るとしても、このクラスにはもう一人の二大美女の松山さんもいるもんな」
「あーそういえばそうだったな」
「なんだよ興味なさそうだな」
「女に興味がないだけだ」
「え、やっぱりそれって……」
「安心しろ、男にはもっと興味がない」
俺の意味深な発言に、自分の体を抱きながら諒太が訝しんだ目でこちらを見てきたのできっちりと訂正しておいた。
最も、諒太以外にもちらほらと訂正しなければならない奴らがいたのでまとめて訂正した。
「そもそもお前はもっと他に喜ばしいことがあるだろ」
「ま、それは置いといてってやつだ」
俺が視線でとある人を指すと、諒太は普段のおちゃらけた感じではなく少し寂しそうな、何かを悟ったような顔を覗かせた。
そんな顔はほんの一瞬で見る影もなくなり、諒太は元気に俺の背中を叩く。
「ま、俺はお前の味方だけどさ、白河さんを幸せにすることに専念しとけよ?」
「バカ言え。俺が幸せにしなくたって、あいつはきっと誰かが幸せにしてくれるよ」
俺は心の底からそう思っていた。
諒太は俺の友達だから、必要以上に雪音のことを話題に出してくる。
しかし、実際問題彼女の周りには俺が想像するよりも遥かに多い人たちがいて、俺の知らないところで、知らない間に幸せになっているんだと思う。
だから、俺には本当に関係のないことなのだ。
無関係でいることが、一番の手助けなのだ、と。
「いつか、誰かのそばで笑ってる姿を見れたらそれでいいよ」
俺は諒太に聞こえるか聞こえないかの声量で、そうぼそっとつぶやき、友達と楽しく話している雪音に一瞬だけ視線を向けた。
その日の晩、翌日が休日ということもあり、昨日買ったラノベをオールで読むと決めていた俺のもとに、一通のメッセージが届いた。
「なんだ?」
俺は手にしていた本をベッドの傍に置き、スマホを手にした。
確認すると、相手は葵だった。
『日曜って暇?暇なら恋夏の映画見に行かない?』
恋夏とは、恋をするのに夏は遅すぎるというギャグ要素の強いコミカルな恋愛ものの作品で、一期二期と大好評で最終章として満を辞して映画化が決まった作品である。
昨日話し込んだ時に、この作品の話がチラッとでたような記憶はある。
俺もちょうど一人で見にいこうかなと思っていたので、感想を語り合えるオタク友達と一緒に行くのはちょっと興味がある。
『暇だし行こうかな』
『じゃあ決まりで。集合時間とかはまた連絡するね』
俺が返信してすぐに葵から返事が返ってきた。
現役JK半端ねー。
拍子抜けするほどあっさりと休日に予定ができた。
デート……ではないか、友達と遊びに行くだけだし。
それにしても、友達と休日に遊ぶなんて中学の時以来だな。
基本アニメ見たりラノベ読んだりゲームしたりと休日は家で一人で満喫することが多かったからな。
自分で言ってて少し悲しくなるが。
しかしまあ、学校で話すにはどうしても制約があるので、オタクトークに花を咲かせるには休日に会うしかないしな。
映画見に行くってのはきっかけとしては一番乗りやすいな。
俺は初めて友達とアニメの映画を見に行くことに胸を高ならせながら、枕元の本に手を伸ばし、読書タイムへと戻った。
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