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三話

「いやほんと、まさかここで夏菜子が来るとは思わないじゃん!」

「間違いない。奏はどうしたら良かったんだよって」


 太陽は沈み時刻は夜の七時を回った頃、俺たちは本屋の近くのファストフード店で向かい合って先ほど読み終えたラノベの感想を語り合っていた。


 どうしてこんなことになっているのか、時間を少し巻き戻す。




「付き合ってよ」

「へ?」


 俺が鳩が豆鉄砲を食ったようにきょとんとしていると、彼女は自分の発言に気がついたのか慌てて訂正した。


「違う違う変な意味じゃなくて、その、君恋の話できる友達とかネットの人しかいなかったし、リアルで語り合うとかしたことなくて、今から時間ないかなと思って」

「なるほど」


 少し顔を赤くしながら、彼女は必死に言い訳のように捲し立てた。


 その発言に嘘がないことは誰が見てもわかって、同志を見つけた喜びに満ちていた。


 だからこそ、俺も少し高鳴っていた心を受け入れることができた。

 相手も同じように思っていてくれたのだとわかったから。


「もちろん、問いあえずこれ買ってくるわ」

「あ、私も」


 そういって彼女は近くにあった新刊を数巻手に取って一緒にレジに向かった。

 



 ということがあって今に至る。


 遅い時間なのは、俺たちがここに来るなり早速買ったばかりの君恋の最終巻を読んでいたからだ。


 君恋とは、今オタクの中でかなり勢いのある作品、「君を恋人と呼べたなら」という作品の略称である。

 男子高校生の主人公と、二人のヒロインが織りなす王道ラブコメなのだが、三人の思春期ならではの心情の描写が心を惹きつける作品である。


「はぁ、これで終わっちゃったのか」

「いやー神作品が終わると、心にぽっかり穴が開くっていうか、ぼーっとしちゃうよな」

「そうなんだよね。でもこの作品もアニメ化決まってるし、まだまだ楽しめるよね」

「だな、動く奏と夏菜子早くみてー」


 好きなことを、好きなだけ話す。

 まさにオタクにとってこれ以上ない最高の時間だ。


「でも、まさかこうしてクラスメイトとオタクトークできる日が来るとは思ってなかったよ」

「だよね。いくら昔よりマシになったとはいってもね、周りの目もあるし」

「松山さんもやっぱりそういうこと気にするんだ」

「まぁね。どうしても私って目立つし、人の目は気になるよね」


 とても理解できることをいう。

 目立つ人間は、人の目を気にして生きないといけない。


 人は誰しも人から求められる人間像になろうとする。

 そしてそれは、目立つ人間なら求められる数が増えるので、必然的に人目を気にするようになる。


 白河雪音もその一人であるが、彼女は目立ちすぎるので、周りにも影響があるが。


「松山さんも苦労するね」

「葵でいいよ」

「あーじゃぁ葵で。俺も祐希で大丈夫」

「じゃあ祐希って呼ぶね」


 そういって笑う葵。

 

 うん。よく考えたらこの子学校の二大美女だった。

 アニメでしかみたことのない設定だが、それをアニメオタクの女の子に当てはまってるってそんなことあるんだな。


「そういや、君恋以外もなんか買ってたよな」

「うん。新人賞のやつ二作と、新刊二冊かな」

「え、もしかして大賞のやつ?」

「そう!」

「え、俺もそれ買った!なんかマジで泣けるって前評判だよな」


 同じ作品に目をつけていたことに、またしても盛り上がる俺たち。


 オタクにはわかると思うが、まだ有名になっていない作品で趣味が被った時の嬉しさは何にも変え難いのだ。


「じゃあさ、今季はアニメ何みてる?」

「えっとね、去年のこのラノの新作の一位の覇権のアニメでしょ」

「うんうんそれから!」


 どんどんと出てくる話したいこと。

 俺たちは溢れてくる話題が尽きるまで話したいという気持ちで永遠に近い時間を過ごした。



「はぁはぁ今何時?」

「んっとね、九時過ぎかな」


 あまりの弾丸トークに、お互い少し息切れをしながら、俺はスマホで時間を確認した。


 人と話すことはエネルギーを使うことなのだと改めて実感させられる。


「もう遅いし、そろそろ帰るか」

「そうだね、まだまだ話したりないけど、仕方ないね」


 スマホの時計を確認して、うんうんと頷く葵。


 なんだかんだと二時間ほど話し込んでいた俺たちは、荷物をまとめると店を後にした。


「やっぱりリアルで語り合うのって別物だね」

「だな。ネットもいいけど、リアルは話がどんどん弾むし」


 リアルタイムでの意見の交換。

 相手の表情や声色から伝わるその作品がどれだけ好きかという熱さ。


 全て、ネットでは経験できないものだった。


 少し名残惜しさもあったが、店から駅までの道は一瞬で過ぎ去ってしまった。


「また話そうね、祐希」

「おう、もちろん」


 そういって、俺たちは駅で別れた。


 今まで、交流するのはネットしかないと思っていたが、思わぬところでオタ友ができた。

 俺は妙な満足感を胸に、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ。

この作品を読んで頂きありがとうございます。


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