十話
雪音が俺の家に泊まった翌日、一緒に登校して変な噂になるのが嫌だった俺は、ひと足先に学校へとついていた。
「おはよう祐希」
「おはよ、諒太」
俺が登校してくると、すぐに朝練終わりの諒太が俺の席へとやってきた。
「今日も朝練か?」
「まあな。朝早くて辛い」
そういって、本当に眠そうにあくびをする諒太。
何やら大会が近いとかで最近は放課後と休日以外にも朝練を行なっているらしい。
いやー普段の諒太からは想像できないが、多分すげー頑張ってるんだろうな。すごい。
俺が絶対に口にしないが心の中で諒太のことを褒めていると、いつものように教室が賑やかになる。
理由はもちろん雪音だった。
「おはよう雪音」
「おはよう、葵ちゃん」
いつもと変わらず稲塚学園二大美女がバラを背景に咲かせて挨拶を交わす。
ほんと、絵になる二人だな全く。
本当にいつもと変わらない様子の雪音に、思わず家での出来事を思い出し、やはり同一人物か疑わしいなと思い、凝視してしまう。
そんな俺の様子を見逃すはずもなく、諒太が突っ込んでくる。
「どうしたんだ?ついに思いを伝える気になったのか?」
「なってないし、第一思っていない」
「じゃあなんで見てたんだよ」
「こっちにも色々事情があるんだよ色々と」
「くー。やぱり幼馴染は違うねー」
「幼馴染だからしんどいんだよ」
そう、そうなのだ。
俺と雪音が幼馴染じゃなければ、その他大勢の男と同じなら、どれだけ楽だっただろうか。
可愛いと友達と言い合い、噂話で一喜一憂して、どこまでいっても雲の上の存在で、結局関わることなく終われたらどれだけ楽だっただろうか。
「どした、おーい。祐希、生きてるかー」
そんなことを一人考え込んでいると、全く話を聞いていなかった俺を心配して諒太が目の前で手を上下に振っていた。
「ああ悪い。どうしたんだ?」
「いやだからさ、正妻のいるお前にとって松山さんってどんな感じなんだ?」
「は?なんだよ急に」
「だってさ,白河さんと同じくらい人気してんだぜ、松山さん。そりゃ気にはなるだろ」
諒太の理由はなんともごもっともなことで、俺は一度冷静に考えることにした。
俺は趣味というつながりでたまたま仲良くなったが、実際あれがなければ周りの奴らの雪音への感じと同じで雲の上の存在のような女の子だっただろう。
顔も可愛いし、性格も良さげで、雲の上だけど、なんだかんだ仲良くしてくれて、勘違いして好きになってそれで振られる未来まで想像できる。
うん、なんか後半はちょっと悲しかったけど、でも実際そんな気がする。
「うーん。性格も良さそうだし、なんか誰とでも仲良くできそうだから俺も仲良くなれるかもなーって感じか?」
「へー祐希にしてはちゃんと人のこと見てんだな」
「なんだよ、俺が自分にしか興味ないみたいじゃないか」
「いやさ、なんか興味ある人とない人の差が広いっていった方がいいのか?」
「そんなことないと思うけどな」
「じゃあ俺はどう見えてんだ?」
「顔はいいけどバカな残念イケメンってところか」
「ほらみろやっぱり興味ないじゃねぇか」
俺がどストレートに思ったことを言うと、諒太が怒って俺を揺らしてきた。
俺はそんな諒太を放っておきながら、さっきの質問を改めて思い返した。
何の関係も持たなかった雪音と葵が、もし同じクラスになったら俺と彼女たちはどんな関係になっていたんだろうな。
そんなことを心で呟いて、うざったい諒太の相手に戻った。
特に何もハプニングが起きることもなく、平穏な一日が終わろうとしていた頃、翌日が休みということで日課の読書をしていた俺の部屋の扉が叩かれた。
「祐希入ってもいい?」
「雪音か、いいぞ」
突然の訪問に驚きはしつつも、雪音を招き入れた。
雪音はいつになくしおらしく俺の部屋に入ると、ドアノブに手をかけたまま話し始めた。
「あのさ、明日って暇?」
「暇っちゃ暇だけどなんだ?」
あまりに抽象的すぎる質問に、俺も回答に困ってしまう。
どういった要件なのかと続きを待っていたが、なかなか口を開かない雪音。
それどころか、ドアノブを握る力が強くなり、反対の手では可愛らしい寝巻きをギュッと掴んでいた。
何を言いたいのかわからないが、変な間を嫌って、俺は冗談で空気を変えることにした。
「なんだ、俺とデートでもしたいのか?」
「なっ!」
俺がそういうと、雪音は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
これで緊張が解けたのか、雪音はいつもの調子に戻って、そして衝撃的な話を続けた。
「そうよ、悪い?」
「は?」
そういって顔を背けた雪音は、表情こそ見えはしないものの、耳まで真っ赤になっており、どうやら俺の聞き間違いではなかったことが見てとれた。
というか、どういうことだ?
つまり今、雪音は俺にデートのお誘いをしにわざわざ俺の部屋にきたことになる。
しかし、あの雪音がなぜ俺にそんなことを言い出したのだろうか。
きっと、何かしらの裏があるのは間違いない。
何かの罰ゲームか、それか学校の友達ではいけない理由があるのか。
いくつもの可能性を考えるが、どれも核心に迫るものはない。
俺が全く返事をしないためか、痺れを切らした雪音がもう一度こっちを見て追撃してきた。
「行くの?行かないの?どっち?」
「い、行きます行かせてください」
あまりの剣幕に俺は後退りながらそう返事をする他なかった。
そんな俺をよそに、返事を聞けて満足したのか、雪音はどこかホッとしているように見えた。
「じゃあ明日は十時に最寄駅集合で」
「えっと何しに行くとかは……」
「じゃ、そういうことだからよろしく」
「はぁ」
俺に有無を言わせず要件だけ伝えた雪音はさっさと部屋を出ていってしまった。
一体どこへ行くのか、何をするのか、どうして俺が必要なのか、何一つわかったことはないが、一つだけ確定したのは雪音とのデートが明日行われることだけだった。
「デートかぁー」
明日のデートに不安を感じるしかなく、俺は思わずため息をついた。
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