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6. 影



6. 影


夜の王宮地下室は、静寂に支配されていた。青白い光を放つ古代PCのスクリーンの前に、陽光は静かに座る。先ほどまで、未来の断片を読み、民を導く決意を固めたばかりだ。しかし、その静寂は突然、微かな異変によって破られた。


モニターに、一瞬だけ未知の文字列が浮かんだ。瞬間的であり、目を凝らさなければ見逃してしまうほどの短さだった。だが、その瞬間、陽光の心は一気に緊張に包まれた。


【異常値予測:検知不能】

【干渉存在:確認】


文字は光の渦の中で不気味に揺れ、次の瞬間には消え、画面は通常の未来予測の表示に戻った。まるで何事もなかったかのように、淡々と人々の感情と出来事の可能性を示す光の川が流れる。しかし、陽光の眉は深くひそまった。


「……干渉存在?」

彼は低くつぶやき、モニターを凝視する。干渉存在――それは予測を狂わせる、外部からの未知の要因を示しているのだろうか。古代PCは、未来の断片を解析し、可能性をすべて可視化する。それでも、予測外の何かが存在することを警告したのだ。


胸の奥で、微かな不安が灯る。これまで自分は、未来の断片を読み、民を導く王としての力を信じていた。しかし、未知の干渉が存在する以上、王国の未来は完全に掌握できない。どれほど準備を重ねても、想定外の事象が起これば、民を守る計画は崩れ去るかもしれない。


陽光は手を顎に当て、静かに考え込む。

「未知の干渉……一体、何が起きるというのだ」


古代PCは決して答えをくれない。文字は消え、画面は平穏を取り戻す。しかし、その短い表示は、王の心に深く刻まれた。未来は計算可能な範囲だけで動くわけではない。必ず、予測外の異常値が潜む。


陽光は深呼吸をひとつし、思考を整理する。

これまでの未来操作は、民のための調整であった。暴動を未然に抑え、聖戦を阻止し、裏切りの諸侯を封じる――それらは、古代PCの予測通りに進めば、ほぼ確実に達成できる。しかし、干渉存在があるということは、誰も予測できない変数が存在するということだ。未来の枝分かれは、常に無限に広がる可能性を含んでいる。


「これまでの方法では、対応できないかもしれない……」

陽光の声は地下室に低く響く。胸にわずかに寒気が走る。未来の制御には自信があった。それでも、この未知の存在は、自らの計画を脅かす影であり、王としての完璧な掌握を阻む存在だった。


光の川はいつもと変わらず流れる。赤、青、黄、灰――色彩は人々の感情の振幅を映し出す。だが、今夜の地下室の空気は、どこか異様に重い。未知の干渉が、まるで見えない手で画面の向こう側から揺さぶっているかのようだ。


陽光は椅子の背もたれにもたれ、静かに目を閉じる。古代PCの光は目にまぶしいほどだが、その光の中で、彼は考え続けた。

「未知……それは、私の手の届かない未来。だが、必ず備えなければならない」


未来の断片は、予測可能なものだけではない。民を守るためには、未知の脅威にも対応する覚悟が必要だ。王としての責務は、民の命を守るだけでなく、予測不能な影にも立ち向かうことを意味する。


モニターは再び平穏を取り戻す。光の川は滑らかに流れ、三年後、五年後、七年後の未来断片を淡々と示す。しかし、陽光の瞳はスクリーンの奥深くに、消えぬ不安の影を見つめていた。


「干渉存在……お前の正体は何だ」

彼は静かに呟き、手を机の上で組む。予測外の異常値、未知の干渉――それは、王国の未来を左右する可能性を秘めている。だが、恐怖だけでは何も変わらない。王としての覚悟は、未知に直面しても行動することを要求していた。


陽光は再び視線をモニターに戻す。青白い光が顔を照らす。影は消えた。しかし、その存在は彼の胸に深く刻まれている。未来の制御は完全ではない。王として、未来を読む者として、陽光は新たな決意を固める。


「未知の干渉……必ず見極め、民を守る」

消えぬ不安とともに、決意の炎も静かに灯った。古代PCの光は、夜の闇を照らし続ける。その光の中で、未来を読む王の孤独と覚悟が、静かに、しかし確実に深まっていった。




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