表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/183

4. 民の視点



4. 民の視点


やがて、民は不思議な現象に気づき始めた。

市場や街角、農村や港町――人々の間で、ささやきが広がる。


「昨日まで不安だったのに、今朝には問題が解決している……」

「飢饉の噂があったはずなのに、陛下が手配した支援で収まったらしい」


こうした声は、単なる偶然ではないことを示していた。町や村の人々は次第に、王が未来を知り、問題が起きる前にすべてを取り除いているのではないかと考えるようになる。


「まるで陛下は未来を知っているようだ……」

老人たちは震える声でそう口にし、子どもたちは目を輝かせながら、王の話を聞く。青年たちは口々に、王の指示が時を先取りしていることを噂し、家族や友人たちに話す。その噂は町から町へ、村から村へと瞬く間に広がり、人々の間で伝説となった。


民の目には、陽光はもはやただの王ではなく、未来を読む者として映る。人々はその知恵と判断を神秘の力に結びつけた。日々の暮らしの中で、暴動も戦争も裏切りも、王の行動によって未然に防がれる。だからこそ、民衆の信頼と畏敬の念は日に日に強まった。


山都谷の王は次第に「未来を読む者」として神格化されていく。王宮だけでなく、民衆の生活にまでその神話は浸透していった。市場での商人の話、農村での農夫の噂、港町の漁師たちの会話――どこでも王の先見の力が語られ、人々は王に感謝と尊敬の念を抱いた。


この現象は、宗教の世界にも影響を及ぼす。太陽神を祀る山都谷教は、王の行動を新たな教義の中に組み込むことを決めた。神官たちは集会で説く。


「太陽は未来を照らす。その光はすべてを見通す。陛下は、その光を読み取り、民を守る者なり」


寺院の壁画には、王が太陽の光に包まれ、未来の地図を手にして民を導く姿が描かれた。信者たちは祈りの中で、王に未来を読む力を授けるよう願うようになった。祭りの中での祝辞にも、王が未来を見通す光の存在として讃えられる。


民衆の信仰心と王への信頼は、王国全体の安定に直結した。争いや不満の芽は王の前に芽吹くことなく、民は安心して日々の生活に励む。農作業に励む農夫たち、商いに勤しむ商人たち、学問に励む学者たち――すべての生活の場面で、王の存在は不可視の支えとして感じられた。


陽光自身も、民の変化に気づき始める。街や村を訪れると、人々はひれ伏し、言葉少なに深く頭を下げる。畏敬の眼差し、感謝の視線、信頼の笑顔――そのすべてが王の胸に重くのしかかる。力を持つことの喜びと同時に、その責任の大きさを痛感する瞬間でもあった。


「未来を知る力……それは、守るべき民がいて初めて意味を持つ」

陽光は静かに心の中でつぶやいた。古代PCが示した未来の断片、分身リーマンやスパイによる調整、王としての決断――それらすべてが、民の生活と心に直接影響を与えていた。


やがて、未来を読む王としての神話は、民の生活の隅々にまで根を下ろす。王の名は、太陽と同じくらい確かな存在として語られ、人々は夜空を見上げるたび、太陽の光と王の導きの力を感じるようになる。


「太陽は未来を照らす。陛下はその光を読む者なり――」

この言葉は、民の口から口へと伝わり、祝祭の歌となり、子どもたちの読み聞かせとなる。王は未来を読み、民を導く――その事実は、王国に安定と信頼、そして希望をもたらす光となった。


王としての責務は重い。しかし、未来を知り、民を導く力を持つ陽光にとって、その責務は畏怖と同時に誇りでもあった。古代PCが示す未来の断片は、彼にとって単なる警告ではなく、民を守るための羅針盤であり、王としての使命を示す光となったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ