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3. 選択の三案



3. 選択の三案


モニターの光が一層強まり、古代PCが次の画面を提示した。その瞬間、地下室の空気は張り詰め、微かな電子音が耳をつんざく。画面には三つの明確な選択肢――制御モード、予測モード、融合モード――が浮かび上がった。


制御モード

 → 民衆の感情を強制的に均一化する。怒り、恐怖、嫉妬、快楽、絶望――すべての感情は一定に整えられ、暴動や戦争の可能性は完全に消滅する。しかし、代償として自由意思も失われる。民衆は完全に光の秩序の下で動く存在となり、思考や感情の自発性は消える。


予測モード

 → 感情の動きを完全にシミュレートし、未来を先読みする。民衆の感情の波、社会の動き、戦争や宗教対立――すべては数値とモデルとして提示される。しかし、予測外の“異常値”が現れた場合、制御不能となり、混乱や破滅が生じる可能性がある。精密な未来予測のリスクを伴うモードである。


融合モード

 → 王自身を感情シミュレーションと直結させる。王は民衆の心を直接「感じ」、未来の行動を操作できる。しかし、王自身の精神も感情に呑まれる危険性がある。怒りや恐怖、嫉妬、絶望の波が王に直接襲いかかり、精神の均衡を失えば、国家統治そのものが危険に晒される。究極の統制力とリスクを併せ持つモードである。


陽光は画面を凝視した。心の中に、冷徹な計算と冒険心が交錯する。制御モードは確実に秩序を生むが、民衆の自由意思を奪う代償が大きい。予測モードは自らの手で未来を読む力を得るが、予測不可能な変化が生じれば統治は崩壊しかねない。そして融合モードは、王自身の精神と民衆の感情を直結させる究極の統治手段であるが、精神の安全が保証されないリスクがつきまとう。


側近が恐る恐る口を開く。

「陛下……どの選択肢も、王国の未来に巨大な影響を与えます。安定か、予測か、あるいは王自身の直感か……」


陽光は微笑み、しかしその目は冷たく光っていた。

「なるほど……三つの道があるか。ひとつは確実だが自由を奪う。ひとつは予測を可能にするが、未知の異常値に脅かされる。もうひとつは、私自身を賭ける道……」


古代PCのモニターには、無数の感情データの波形が流れ続ける。怒り、嫉妬、恐怖、快楽、絶望――すべての民衆の心の揺らぎが、まるで海の波のように動いている。その波をどのように扱うかで、王国の運命は決まる。


「自由意思を犠牲にしてでも、秩序を手に入れるか」

陽光は一瞬、制御モードの静けさを想像した。市場も農村も軍も、すべてが均一化され、争いや混乱の火種は完全に消える。しかし、民衆は自ら考え、感じることを失う。光の秩序は完璧だが、人々の魂までも支配下に置く冷徹な秩序である。


「未来予測で、危険を回避するか」

予測モードでは、民衆の行動や感情の波をモデル化し、未来の混乱を未然に防ぐ。しかし、未知の変数が現れれば統制は崩壊する。完璧ではない秩序、しかし自由はある。この道は、リスクと知略が求められる統治の術である。


「そして……自らを賭けるか」

融合モードでは、王自身の精神が民衆の心に直接接続される。感情の波は王自身に直結し、未来を操作可能となる。しかし、王の精神が感情に飲まれれば、統治は即座に危機に陥る。究極の力と究極の危険が同居する道。光の下で民衆を完全に掌握するためには、王自身が光と影の両方に耐えねばならない。


陽光は深く息をつき、モニターの波形を見つめながら、冷徹に未来を計算する。民衆の心はもはや秩序化されているが、次に王が取る手によって、王国の運命は大きく変わる。怒り、恐怖、嫉妬、絶望、快楽――すべての感情が、今まさに統御の対象として王の前に広がっていた。


「なるほど……三つの道……どれを選ぶかで、未来は決まる」

陽光は微笑み、指先をモニターにかざす。その瞬間、地下室の青白い光が彼の手の動きに反応し、古代PCが微かに唸った。未来の社会は、王の決断を待つ──怒りも恐怖も嫉妬も、すべて光の秩序に収束するか、それとも予測不能な変化に翻弄されるか。選択の時は、今、ここにあった。



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