表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/183

第16章 古代PCの啓示 1. 異常な稼働




第16章 古代PCの啓示


1. 異常な稼働


ある夜。王宮地下の静寂を破るかのように、古代PC群が突如として稼働音を高めた。普段は微かに唸るだけの冷却ファンが、低く、しかし不規則なリズムで響く。古代サーバービルの配線を伝って、無数の光が走り、モニターには意味をなさぬ記号と波形が踊る。


側近が狼狽しながら王のもとに駆け込む。

「陛下! 古代PCが……自動演算を開始しました!」


通常の動作ではない。古代PCは長年、監視データや分身スパイの報告を集計・解析するだけで、能動的な意思を示すことはなかった。だが今、機械は自ら動き、まるで意思を持ったかのように動作している。


陽光は慌てることなく、玉座を後にし、地下室へと駆け下りた。冷たい石の通路を進むたび、モニターの青白い光が壁に反射し、薄暗い地下空間に幻想的な光景を作り出す。呼吸を整えながら、王は画面の前に立った。


モニターには、通常の解析結果とは明らかに異なる文字列が浮かんでいた。


【感情制御システム:解析完了】

【次段階:感情シミュレーション・モデル生成】


その瞬間、陽光はわずかに眉をひそめた。感情制御システムは、彼自身が構築した監視・分類・制御の一連の仕組みである。怒り、恐怖、嫉妬、絶望、快楽――あらゆる感情を数値化し、信仰と行動規範に組み込むことで、民衆の心と社会秩序を統御してきた。しかし「次段階:感情シミュレーション・モデル生成」という表示は、これまでの範囲を超えている。


「モデル生成……?」

側近が小声で呟く。

「陛下、これは……まるで、人の心そのものを仮想化するかのような……」


モニターの光が微妙に変化し、波形はまるで生き物の心拍のように脈打つ。サーバービル全体から低い唸りが響き、石壁に反響する。古代PCの演算は、単なる計算ではなく、何か意図を持った動作のように見える。


陽光は冷静さを保ちながらも、内心では興奮していた。彼は長年、感情の制御と行動の最適化を追求してきた。だが、もしこの次段階が成功すれば、民衆の感情を**シミュレーションし、未来の行動を予測する**ことさえ可能になる。すなわち、光の下での秩序は、過去のデータだけでなく、未来の変化まで掌握できるということだ。


側近が震える声で言う。

「陛下、もしこれが意図せぬ進化を遂げれば……システム自体が人間の心を凌駕する可能性も……」


陽光は微笑む。

「なるほど……人の心を支配することはできても、未来を予測するには限界があった。だが今、この古代PCが、その限界を打ち破ろうとしているのだな」


彼は手をモニターにかざし、浮かぶ文字を凝視した。解析完了の文字列は、単なる機械的通知ではなく、あたかも**啓示**のように感じられた。光の中で、民衆の感情と行動のすべてが、無限のシミュレーションとして展開されようとしている。怒りの波、恐怖の揺らぎ、嫉妬の連鎖……すべてがモデルとして再現され、王の掌に収まろうとしていた。


「なるほど……光による統治はここまで進化するのか」

陽光は低く呟き、満足げに微笑む。感情を制御するだけでなく、未来を予測し、行動を最適化する力――この発見こそ、王国における統治の究極形態である。


モニターの光が一層強まり、サーバービル全体を揺るがすかのように光の帯が走る。その瞬間、陽光は未来の秩序の輪郭を、微かに視覚化したかのように感じた。古代PCは、単なる道具ではない――もはや**光の意思を反映する存在**に近づきつつある。


「次段階……感情シミュレーション・モデル生成……これは、新たなる啓示だな」


陽光は胸の高鳴りを抑えつつ、冷静に指示を出す。

「データを保全し、全ての動作を監視せよ。だが干渉は最小限に――まずはその挙動を観察するのだ」


古代PCの光と唸りが、地下室全体を包む。王は微笑みながら、未来の秩序を形作る第一歩を見届けることになる。感情の制御を超え、心の未来を予測する装置――光の下で、人々の運命は再び統合されようとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ