4. 既成宗教への盾
4. 既成宗教への盾
山都谷教が広まり始めると、周辺国の既存宗教勢力は黙っていなかった。長年にわたり地域の精神と社会秩序を支配してきた彼らにとって、新興宗教の出現は明確な脅威であった。ある寺院の長老は、会議の席上で声を荒げた。
「太陽を神とするなど、野蛮極まりない!」
「新しい教祖など認めることはできぬ! 弾圧すべきだ!」
初めのうちは、既存宗教は山都谷教の勢力を封じるため、強硬な態度を取り、布教の禁止や信者への圧力を試みた。しかし、陽光王はこの状況を予測していた。山都谷教は単なる信仰の広がりに留まらず、経済圏と密接に結びついていたのである。分身リーマンたちの布教活動によって、商人や農民は教義と日常生活、そして市場や取引の利便性を同時に享受していた。
既成宗教勢力が山都谷教を弾圧すれば、経済活動に関わる多くの人々を敵に回すことになる。都市では市場が停滞し、農村では協力体制が崩れる。交易や物流に影響を及ぼせば、長期的には自らの勢力の存続にも打撃を与える。
そのため、次第に既成宗教の強硬姿勢は揺らぎ始めた。弾圧を続けることは、民や商人の反発を招き、自らの権威を失墜させるリスクが高い。寺院や教団の指導者たちは苦渋の決断を迫られた。やがて、彼らが選んだ道は「共存」であった。
既成宗教は山都谷教と対立するのではなく、互いの存在を認め合い、棲み分ける形を取った。太陽神の信仰は新興宗教として独立した地位を保ちつつ、既存宗教の儀式や祭礼と衝突することなく併存したのである。民衆にとっても、二つの宗教は矛盾するものではなく、日常生活に柔軟に組み込める要素となった。
陽光王は、この戦略的な優位性を理解していた。信仰を民衆と経済圏に深く結びつけることで、物理的な弾圧や宗教的な圧力に左右されない「盾」を作り上げたのだ。山都谷教の光は、単なる精神的指導力に留まらず、社会・経済・政治の複合的な影響力を伴うことになった。
その結果、山都谷教は、民衆の日常生活、都市の商業活動、農村の協力体制の中にしっかりと根を張った。既存宗教はもはや新興宗教を排除できず、共存の道を選ぶほかなくなったのである。陽光王は、民と商人が自発的に光を受け入れ、太陽神の理念を日々の行動に反映させる様子を静かに見守り、微笑んだ。
こうして山都谷教は、周囲の宗教勢力との緊張の中で、その立場を確固たるものとした。単なる信仰の拡張ではなく、社会構造と結びついた宗教として、陽光王の導く光は確実に地上に広がっていった。太陽の光が隅々まで届くように、山都谷教は民の心と日常に深く浸透し、既存宗教に対しても強力な盾となったのである。




