4. 爆発的な繁栄
第13章 交易の帝国
4. 爆発的な繁栄
制度導入から数か月。
陽光が緻密に設計した交易圏は、いよいよその成果を見せ始めた。
山都谷の市場には、各国から商人たちが押し寄せる。
穀物、鉄、木材、薬草――
かつては限られた地域でしか取引されなかった物資が、王国直轄市場を経由して活発に流通する。
市場には熱気が満ち、交渉の声と荷車の軋む音が混ざり合い、まるで生き物のように息づいていた。
「金の流れが速い……!」
分身リーマンの一人が帳簿を見つめながら叫ぶ。
「こんなに取引が活発になるとは!」
陽光は静かに微笑む。
帳簿には、各市場の収益、交易ルートごとの取引量、商人や諸侯への利益分配状況が正確に記録されている。
数字は予測を大きく上回り、帝国の経済力が確実に拡大していることを示していた。
通貨の統一も功を奏した。
王国が発行する新金貨により、各地の交易は一元化され、為替の混乱は完全に消えた。
周辺国からの輸入品も、通貨が統一されることで取引条件が明確になり、計算の誤差や不正取引が減少する。
市場の賑わいは、民衆の生活にも直接的な影響を与えた。
飢えに苦しんでいた村人たちは、余剰食糧の流通によって安定的に供給を受けられるようになった。
商人たちは護衛商隊に守られながら安心して取引でき、利益は確実に手元に残る。
諸侯も王国からの利益分配を受け、政権内での忠誠を高めつつ、財政の安定を享受する。
山都谷は次第に、経済圏の中心として揺るぎない地位を築いた。
商隊は街道を往復し、港には輸入品が順調に到着し、国内外の交易が一体となる。
情報の流れも円滑で、どの都市で何が不足しているのか、どの商人が取引に積極的か、すべて帳簿と分身リーマンを通して把握できる。
「帝国の交易網は、これで完全に掌握された」
陽光は地図の上に指を置き、各市場の位置と物流量を確認する。
「利益分配、護衛商隊、直轄市場……すべてが連動し、交易の中心は我らの手にある」
分身リーマンたちは、各市場の統計データを元にさらなる改善案を提案する。
「この市場に医薬品の供給を増やせば、周辺国への影響力も高まります」
「物流の混雑を緩和するため、分岐ルートに新たな護衛商隊を配置しましょう」
陽光は静かに頷き、次の布石を考える。
「繁栄を維持するには、常に供給と需要のバランスを監視する必要がある。
金の流れを制すれば、帝国の影響力は剣よりも強くなる」
帝国の民衆は、以前には考えられなかったほどの安定と豊かさを享受していた。
市場での取引が活発になることで、物価は適正に保たれ、飢えに苦しむ者は減少した。
商人は利益を手にし、諸侯は確実な収益を得ることで、帝国全体が一体となって繁栄する。
山都谷火山王国は、単なる軍事国家ではなく、**交易を中心にした経済大国**としての地位を確立したのだ。
外交で得た時間を活かし、交易網を掌握し、利益分配のルールで従属を固定化した――
この三つの布石が組み合わさった結果、帝国は爆発的な繁栄を迎えることになった。
陽光は帳簿を閉じ、地図の上に手を置く。
「これが、帝国の新たな力の形……剣ではなく、金と交易で示す支配だ」
市場の熱気、商隊の行き交う街道、港に揚がる帆――
すべては帝国の交易圏が生み出した繁栄の証であり、未来への確かな布石であった。
こうして、山都谷は経済圏の中心として、軍事力と外交力だけでは得られない、揺るぎない影響力を世界に示すことになった。
繁栄は爆発的に拡大し、帝国の交易支配は完全に確立されつつあった。




