2. 中心を握る
第13章 交易の帝国
2. 中心を握る
陽光は王城の執務室に座り、交易地図を広げて冷静に布石を打った。
外交で得た半年の猶予は、経済的優位を確立する絶好の時間である。
彼の指は地図上の都市や交易路をなぞり、戦略を緻密に組み立てていく。
まず、農業の余剰分――surplus――を山都谷帝国の**主力輸出品**とする計画だ。
国内の生産力を徹底的に数値化し、余剰食糧を港や市場へ集中させる。
「豊作の年は、余剰を周辺国に売る。
これにより、外交交渉でも経済的な圧力をかけることができる」
次に、医薬品と治療技術を戦略的に運用する。
「単なる物資ではない。高級品として周辺国に売り出すのだ」
陽光は帳簿に、取引予定の医薬品リストと価格、取引先の需要と財力を細かく記録する。
「治療技術の提供は、信用と影響力を増す手段でもある。金と名誉を同時に与えれば、相手は自然に従う」
そして、物流路の要所には「王国直轄市場」を建設する計画を立てる。
街道の交差点、港の入口、河川の要衝――戦略的要地に市場を置き、**通行料と関税を徴収**する。
「ここを制すれば、交易の中心を掌握できる。剣を抜かずとも、相手の喉を押さえられる」
分身リーマンたちは帳簿に沿って、各計画の詳細を計算する。
「余剰食糧の輸出量と輸送能力を組み合わせれば、収益を最大化できます」
「医薬品の流通ルートを特定し、周辺国の需要に応じた供給量を調整すれば、影響力を拡大できます」
「直轄市場を配置する地点の通行量と潜在的徴収額を数値化しました」
陽光はうなずき、さらに布石を加える。
「市場の設置は単なる収益の確保ではない。交易路を帝国の掌の中に置き、物流の流れを制御するためだ」
彼の頭の中では、交易網を軸にした三段構えの戦略が描かれていた。
1. **商品力**――農業余剰品と医薬品による影響力
2. **物流力**――王国直轄市場による通行料・関税徴収
3. **情報力**――交易データを元に取引の優位を掌握
「経済の中心を握る者は、剣を使わずして帝国の命運を左右できる」
帳簿には、それぞれの都市と市場の収益予測、輸送量、周辺国の依存度まで詳細に書き込まれた。
さらに陽光は、護衛商隊と分身リーマンを組み合わせて、交易路の安全と情報の独占を図る。
護衛商隊は、商隊の護衛だけでなく、物流中に発生するトラブルや密貿易の監視も行う。
分身リーマンは現地で交易状況を観察し、数字として帳簿に反映する。
「これで帝国は、軍事的優位だけでなく、経済的にも圧倒的な影響力を持つことになる」
陽光の眼差しは、遠くの港や市場を想像しながら鋭く光る。
「交易の中心を握れば、外交交渉でも常に優位に立てる。相手は自然に我らのペースに従う」
地図上には、王国直轄市場を設置する予定の地点が赤く印され、農産物の輸送ルートと医薬品の流通経路が線で結ばれる。
交易の経済圏が、まるで一つの神経網のように形を成していく。
陽光は静かに立ち上がり、地図の前で指を置く。
「よし、まずは主要輸出品の流通を確保し、市場の設置を進める。
同時に周辺国の反応を見つつ、医薬品で影響力を拡大する」
分身リーマンたちは一斉に作業を開始する。
各市場の建設計画、物流ルートの護衛、商人ギルドとの契約――すべてが緻密に動き出す。
陽光の胸には確かな手応えがあった。
「剣を抜かずとも、帝国の意志は交易を通して世界に示せる」
帝国の交易戦略は、外交で得た猶予を活かして、**経済的覇権を握る布石**へと変貌していった。
王都を中心に、帝国の商流と物流、そして利益の中心が一つに結集する――
その光景は、未来の帝国の繁栄を約束する設計図そのものだった。




