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6. 王の狙い




第12章 外交の帳簿


6. 王の狙い


会議が終わり、代表団たちは静かに退出していった。

残された会議室には、まだ張り詰めた空気がわずかに漂う。

陽光は窓の外を見つめ、遠くの山並みに沈む夕陽を眺めながら、小声で呟いた。


「猶予を作ることこそ、最大の武器だ。

その間に我らは軍を鍛え、経済を固め、さらなる技術を導入できる」


分身スパイが傍らで静かに頷く。

「陛下、まさに外交マニュアルは王国の盾です。

外圧を抑え、時間を稼ぎ、内政と防衛を同時に強化できる」


陽光は帳簿を開き、今回の会議で得られた情報を整理する。

発言の順序、相手の心理反応、各国の妥協点――すべて詳細に書き込み、次の戦略に反映させる。

「豊穣祭までの半年――これが黄金の時間になる」


帝国の軍事力は、まだ完全とは言えない。

だが、猶予を得た今、訓練や装備の更新を集中して進められる。

「兵士たちの士気を高め、戦術を刷新する。経済の基盤を強固にし、物流を整える。科学技術も一層導入する」


分身リーマンたちは黙々と帳簿を整理しながら、戦略を再確認する。

「外交マニュアルの指針通りに動けば、外圧を受けつつも内部改革を加速できます。

猶予期間を最大限に活かすことが、帝国の未来を決定づけるでしょう」


陽光は静かに目を閉じ、半年後の光景を思い描く。

豊穣祭の日、帝国内の各都市は整然とした秩序と活気に満ち、兵士は精鋭として訓練を重ね、民は農業と技術の恩恵を受けている。

そして、周辺諸国との外交は安定し、蛮族の侵攻にも備えが整っている――

すべては、今、この猶予をどう使うかにかかっている。


「外交とは攻めるだけではない。防ぎつつ、育てる――時間こそが最も価値ある資源だ」


分身スパイが帳簿を閉じながら小声でつぶやく。

「陛下、すべては王国の盾と矛、すなわち知識と戦略にかかっています」


陽光は窓の外の風景に視線を戻す。

大地は静かに色づき、山河は落ち着いた秩序を保っている。

その背後で、北方の蛮族はゆっくりと動きを見せるかもしれない。

だが、帝国は今、時間という防御の盾を手に入れた。


「半年間で帝国を強くする――それが私の狙いだ」


帳簿には、外交マニュアルを応用した今回の作戦が詳細に書き込まれた。

心理操作の手順、時間操作の効果、相手の妥協点、そして内部準備の優先度――すべてが次なる戦略の基盤となる。


陽光は深く息をつき、窓を背に立つ。

「猶予を制する者は、未来を制する」


帝国の未来を形作る黄金の時間は、いま始まったばかりである。

外交マニュアルの力と、帳簿に記された戦略――それは、力だけでは守れない帝国の命脈を支える、見えざる武器となった。


分身リーマンとスパイたちは静かに一列に並び、陽光の指示を待つ。

「さあ、次の半年をどう使うかが、帝国の運命を決める」


窓の外の空は深紅に染まり、豊穣祭までの六か月間という時間が、帝国にとって最も価値ある資源として流れ始める。

陽光の眼差しは確かで、迷いはない。

「黄金の猶予――これを無駄にはしない」


帝国の未来を守るための知恵と戦略、それを支える帳簿とマニュアル。

すべてが揃った今、陽光は確信していた。

「次の外交も、我らの掌の上で動く」



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