表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/183

3. 外交の舞台



第12章 外交の帳簿


3. 外交の舞台


数か月後。

周辺大国が山都谷帝国の急膨張に警戒し、代表団を派遣してきた。


会議室の空気は重苦しい。天井から差し込む光も、どこか陰鬱に見える。

代表団の長が厳しい声で切り出す。

「貴国の軍事拡大は周辺の平和を脅かす」

「5か国を呑み込んでおいて“平和”などと……」


重々しい抗議と非難が、部屋の壁に反響する。

一触即発の空気。王侯たちの視線は鋭く、圧力の矢が降り注ぐようだ。


その瞬間、陽光はゆったりと立ち上がった。

肩の力を抜き、微笑を浮かべ、声のトーンは穏やかに保つ。

「皆様、まずはお集まりいただき感謝いたします」


部屋の緊張が一瞬で止まる。

陽光の動作と声の柔らかさには、計算された心理的戦略が隠されていた。

分身リーマンたちが翻訳マニュアルに基づき、王侯の性格や心理傾向を整理している。

「この代表団はプライドが高く、威圧には反発する。だが、論理的根拠と利益を示せば心を開く」


陽光は帳簿を取り出し、交渉フローを頭の中で復唱する。

第一のステップは、非難の言葉を認めつつ、事実と意図を整理して提示すること。

「確かに、私たちは軍事力を整備してまいりました。しかしその目的は、平和の維持と周辺諸国の安定にあります。侵略の意図など、一切ございません」


代表団は眉をひそめる。

「では、我々の不安をどう解消するのか?」


ここで陽光は第二のステップ、利益誘導と心理的緩和を組み合わせる。

「貴国の安全保障と繁栄も、我々の戦略にとって重要です。互いに協力すれば、共通の敵や不測の事態に備えることができます」


分身リーマンたちは、王侯ごとの心理トリガーを帳簿に沿って整理し、陽光にリアルタイムで指示を出す。

「左の王侯には、尊厳と権威を強調した表現を追加してください」

「右の王侯には、利益と安定の数値を提示して安心感を与えます」


陽光は静かに頷き、手元の帳簿に沿って言葉を変える。

「例えば、貴国の商港の安全を保障し、交易利益を維持することを確約いたします。さらに、合同訓練や情報交換により、突然の危機にも迅速に対応可能です」


部屋の空気は次第に変化していく。緊張の糸が少しずつ緩み、代表団の顔にも驚きと好奇心が混じる。

陽光はさらに、第三のステップとして“選択肢の提示”を行う。

「我々は貴国の提案も歓迎いたします。条件を調整し、双方にとって最適な合意点を見つけましょう」


重圧を受けていた王侯たちは、初めて微笑みを見せる。

数字と権威のバランス、心理的誘導、利益の可視化――すべてが計算された動きだった。

分身リーマンたちは静かに頷く。帳簿に基づく戦略が、現実の外交の舞台で正確に機能していた。


陽光は会議の終盤、最後の詰めとして、相手の顔色を見ながら柔らかく提案する。

「この合意により、双方の領土と民の安寧を保障し、貴国の尊厳を損なうことなく協力を進めることができます」


代表団の長は一瞬の沈黙の後、深く息をつく。

「なるほど……貴国の誠意は理解した。よろしい、これを正式に協議事項として受け入れよう」


陽光の微笑みが部屋に広がる。

外交の舞台で、心理戦と戦略、そして帳簿に記された知識が、初めて具体的な成果を生んだ瞬間であった。


分身リーマンたちはささやかに拍手を送り、帳簿をそっと閉じる。

陽光はその光景を見ながら、胸の奥で確かな手応えを感じる。

「これで、山都谷帝国は平和を保ちつつ、周辺諸国と協力する道を示せた」


外交の舞台における一つの勝利。しかし陽光の視線は次の課題に向けられていた。

帳簿に記された戦略は無限ではない。次なる交渉、未知の相手、予期せぬ展開……すべてが待ち受けている。


だが、陽光には確信があった。

「知識と戦略を帳簿に落とし込み、心理を読み解く限り、どんな交渉も導くことができる」


こうして、山都谷帝国の外交の舞台は、古代PCと分身リーマン、そして陽光の卓越した戦略によって、未来への新たな道を切り拓いていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ