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3. 導入



3. 導入


王国の中心、広大な訓練所――ここには、分身リーマンが集められていた。彼らは現代企業で長年鍛えられた“マニュアル運用のプロ”である。組織管理、問題解決、クレーム対応、改善提案――あらゆる業務手順を熟知しており、そのノウハウを王国の秩序維持に転用できる。


陽光は訓練所の中央に立ち、冷静に告げる。


「この手順を軍隊に導入する。兵士の不満は即日報告、三段階で解決策を提示せよ。暴力行為は隔離、性格不適合は再配属。従わぬ場合は強制シャットダウンとリセットだ」


分身リーマンは即座に手順を理解し、データベースを駆使して指示書を作成する。巡回経路の逸脱や小競り合い、局所的摩擦――すべてが報告対象となり、即座に評価され、三段階の解決策が提示される仕組みだ。


「まずはシミュレーションを実施。全鋼鉄兵士を対象に、一斉導入する」


陽光の声に従い、訓練所の巨大スクリーンには鉄の軍団の配置図が映し出された。兵士たちは忠誠心こそ絶対だが、性格のランダム性が微細な秩序の乱れを生む。それを分身リーマンがリアルタイムで監視し、異常を検知次第、即座に対処する。


「暴力行為の兆候がある場合は、隔離措置を即座に実行。性格不適合は再配属で最適な任務へ調整。従わぬ場合は……シャットダウン、リセット」


冷徹な命令ではあるが、これにより鉄の軍団はより安定した統制下に置かれる。陽光は微笑む。忠誠心と秩序の両立――それこそが、王国の防衛と拡張の根幹である。


分身リーマンたちは訓練所を飛び出し、全軍に指令を一斉展開した。衛星通信、魔法回線、古代技術を組み合わせたネットワークを通じ、巡回ルート、行動パターン、監視対象、報告手順までが瞬時に鋼の子らへ伝達される。全軍の行動は、以前にも増して精密かつ規則正しくなった。


しかし、秩序の維持は兵士だけではない。民衆の生活も、王国の安定に直結する重要な要素である。陽光は次の指示を下す。


「一般国民に対しても、苦情処理マニュアルを配布せよ」


街の広場、城下町、農村――あらゆる場所に窓口が設置された。窓口には分身リーマンが配置され、住民からの申し立てや苦情を即座に受理する。手順は明確である。


1. 問題が発生したら、最寄りの窓口に報告すること。

2. 申請から三日以内に回答を受けること。

3. 回答内容は王直属の監査官が確認すること。


民衆は驚きと戸惑いの入り混じった表情を見せる。中世の世界では考えられない、徹底したクレーム対応システムである。過去の王国ならば、民の不満は暴動や密告として現れたかもしれない。しかし今、民は秩序と安全を享受しつつ、声を上げることが保証されている。


「これにより、民の不満は迅速に吸収され、秩序の乱れは最小限に抑えられる」


陽光は、民と軍の双方を管理する設計図を完成させつつあった。鉄の軍団の行動を統制し、民の声を吸収する――二重の秩序維持が、王国を誰にも揺るがぬ存在に変える。


訓練所のスクリーンには、鉄の軍団の動態マップと民衆窓口の稼働状況が並ぶ。分身リーマンは次々と報告書を作成し、陽光の指示を反映させる。僅かな逸脱も即座に検知され、適切な手順が自動で実行される。


塔の高台から見下ろす陽光は、深く息を吐く。鉄の軍団も、民も、分身リーマンも、すべてが秩序の網の中に収まった。これにより王国の統治は、従来の中世王国とは比べ物にならない安定性と効率を手に入れたのだ。


――秩序は設計され、忠誠と手順により維持される。

――鉄の軍団は単なる兵士ではなく、秩序の体現者となった。

――民衆もまた、適切な管理の下で安全と信頼を享受する。


陽光の目は再び遠くの国境に向けられた。秩序を維持する能力を手に入れた今、王国はさらなる領土拡張も、民衆保護も、鉄の軍団を通じて完璧に実現できる。分身リーマンの力を加えた秩序設計――それは、王国の未来を揺るぎないものにする、最終兵器とも言える構造であった。


塔の静寂の中、陽光は微笑む。秩序の設計図は、今、完全に機能を開始したのである。





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