3. 電撃戦の連鎖
3. 電撃戦の連鎖
アヴェロン制圧の成功からわずか数日、陽光は次なる作戦を決定した。標的は隣接する二国、三国――人口も軍規模もアヴェロンとほぼ同等かやや多い国家だった。鉄の軍団の存在は既に隣国に伝わり、恐怖と混乱が広がっていた。情報は速やかに伝わり、敵の指揮系統はあらかじめ動揺を始めていた。
夜明け前、再び蒼い光が地下室を満たす。鋼の子らは整列し、命令を待つ。行軍は静かに開始される。彼らは無限の行動力を持つため、昼夜を問わず、休息も食糧も不要である。行軍速度は人間の常識を超え、敵国の警戒網を軽々と突破していった。
二国目に到達した際、敵国の国境警備は混乱し、兵士たちは恐怖で指示を待つこともできなかった。「矢を受けても倒れぬ」「攻撃は無意味だ」という報告が次々と指揮官の耳に届く。人間の兵士は戦意を喪失し、指揮官自身も降伏を余儀なくされる。王族は城に幽閉されるか、安全な場所に拘束された。
鉄の軍団は一切の略奪や暴行を行わない。民の財産や生活を守りながら、ただ王族と軍を制圧する。その行動は、単なる戦力の誇示ではなく、秩序の象徴であった。城下町では、民は恐怖と同時に規律ある統治の兆しを理解する。
「山都谷の軍は……神の軍だ」
住民のひそひそ話が街中に広がる。抵抗しても無駄であり、従うことが生存の条件であることが瞬時に理解される。敵国の軍は無力化され、降伏の連鎖が始まった。鉄の軍団は迅速に次の国へ移動し、同様の作戦を実行する。民を傷つけず、財産を守り、軍と王族だけを制圧する――その冷徹な徹底性が、恐怖と敬意を同時に生み出した。
三国目も、同様に短期間で制圧された。夜昼を問わぬ行軍、補給不要の兵力、忠誠心のみを持つ兵士たち――人間の軍隊は、もはや敵対する余地を失っていた。指揮官たちは降伏を余儀なくされ、民衆は命と財産を守るために抵抗を諦めた。鉄の軍団の行動は、ただ制圧するだけでなく、秩序と安全の概念を敵国に植え付けるものであった。
この電撃戦は、計画的かつ統制された速度で行われた。わずか半年の間に、五か国が次々と併合され、王国の領土は倍増する勢いで拡大した。王国の力は単なる軍事力ではなく、戦略的知識、兵力管理、民衆心理の制御、そして鉄の軍団の圧倒的な性能によって確立された。
各地で報告される民衆の声は、恐怖と同時に納得が入り混じるものだった。
「抵抗は無意味だ……しかし、被害はない」
「城の守りは崩れたが、街は守られている」
「この軍団には逆らえぬ……だが、守られている感覚もある」
陽光は遠くの戦況報告を読みながら冷静に判断する。鉄の軍団は、単に敵を打ち破るだけでなく、短期間で民衆の秩序と忠誠心を生む力を持つ。戦争そのものの概念を変え、戦力の最大効率を実現する存在――それが、鋼の子らであった。
都市や村では、民衆は自発的に統制に従い、安全と安定を選ぶようになった。鉄の軍団が示す規律と秩序は、恐怖であると同時に、希望にも近い概念となる。抵抗の無意味さを示す一方で、民の生活は守られる。戦争の結果が、単なる破壊ではなく、秩序の確立と統治の再構築で終わる――それこそが陽光の狙いであった。
半年の間に、五か国の王族は幽閉され、軍は解体され、都市と農地はそのまま維持された。王国の支配は、力による圧倒だけでなく、秩序の保証と民衆心理の制御によって成り立った。鉄の軍団は疲れを知らず、民衆の信頼と恐怖を同時に支配する存在として、王国の絶対的な力を象徴していた。
こうして、電撃戦の連鎖は止まることなく、王国の領土と影響力は飛躍的に拡大した。人間の兵力や戦術の常識は、鋼の子らの前ではもはや意味をなさない。陽光は冷静に次の戦略を考えながら、鉄の軍団の圧倒的な秩序と忠誠を胸に刻んだ――これこそ、王国の未来を確実に形作る力であると。




