5. 次なる知識
5. 次なる知識
冬の深まりとともに、王国の街並みには安定と活気が満ち、民衆の笑顔が広がっていた。農業の豊かさは食料を保証し、医療の奇跡は命を守った。経済は循環し、民は希望と安心を胸に日々を過ごしている。街の広場に立つ陽光の目には、成果の光景が鮮やかに映っていた。
だが、彼の視線はすぐに城内の書庫へ向けられた。古代図書館の奥、ほこりに覆われた書架の中には、まだ多くの光る透明板が静かに存在している。農業や医療に比べると、いずれも応用次第で王国の力を飛躍的に高める、潜在的な知識の宝だった。
そこには「冶金」の技術が記されていた。鉱石の精錬法、合金の作り方、鋼の強化手順――これらを理解すれば、より強靭な武器や農具、建築資材が手に入る。「建築」の項目には、耐久性の高い橋梁や水路、城壁や倉庫の設計図が描かれており、都市の規模と機能を飛躍的に拡張できる可能性があった。そして、最も異彩を放つ「火山制御」の項目。噴火や地熱を制御することで、自然災害を防ぎ、エネルギーとして利用する未来の可能性まで示されていた。
陽光は透明板を手に取り、静かに笑みを浮かべた。
「農業と医学は土台だ。次は……この力を守るための技術を選ぶ時が来る」
彼の頭の中では、すでに戦略が描かれていた。農業は民を養い、医療は命を守る。これにより王国は安定し、民は知識の価値を理解した。だが、安定のままでは王国は外圧や自然災害に脆弱である。だから次に選ぶべきは、防衛力、都市基盤、そして自然との調和を可能にする技術である。冶金は武器や道具を強化し、建築は都市やインフラを守る。そして火山制御は、自然の脅威を管理する力を与える。
書庫の静寂の中、陽光は透明板に記された図や文字を一枚一枚確認した。細部まで解析することで、王国の現状と民の能力に最も適した応用法を導き出せる。ここで急ぎすぎれば、民が理解しきれず混乱を招く。慎重さと決断のバランスが問われる瞬間だった。
彼は思案する。
――知識は力だ。しかし、力は守る者を選ぶ。民を守るためには、まず基盤を固めねばならない。農業と医療はその基盤だ。次に守るべきは……民と王国を襲う外的脅威、そして自然災害への備えである。
その時、陽光の脳裏にひとつの構想が浮かんだ。分身リーマンを技術ごとに専門家として配置し、教育と実践を並行させることで、知識の習熟を効率的に進めるのだ。民はただの受け手ではなく、学び実践する主体となる。こうして、次世代が高度な技術を理解し、王国を支える人材へと成長する。
「知識は種だ。蒔き、育て、守る。次は、防衛と発展の種を蒔く」
陽光は光る板を慎重に書架に戻すと、城の窓から夜空を見上げた。星々が瞬き、遠くの山々や河川を照らしている。王国の民が安心して眠るその光景は、彼にとって最大の報酬であった。しかし、その背後には潜在的な危険もある。外の国々が注目し、自然の力は時に牙をむく。知識の力をどう守るか、どの順序で応用するか――王はすでに次の戦略を描き始めていた。
その微笑みには、確信と慎重さが同居していた。知識の種は一度蒔かれれば成長する。しかし、それを守り、適切に育てる者こそ、真の王である。陽光はゆっくりと深呼吸をし、決意を新たにした。
「次の知識は、王国を未来へ導く力となる……そして、民を守る盾でもある」
光る透明板の静かな輝きは、次なる変革の兆しを告げていた。農業と医学で基盤を固めた王国は、今、さらに大きな飛躍の準備を始める。知識の種は、まだ眠っている。しかし、その芽は確実に、王国の未来を支える柱として育ちつつあったのである。




