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4. 王の独占



第8章 古代図書館の扉


4. 王の独占


冷たい風がまだ扉の隙間から吹き込む中、陽光はゆっくりと振り返った。背後に並ぶのは、王国の重臣たち。彼らは未知の光景に目を見開き、驚愕と畏怖とが入り混じった表情を浮かべていた。


古代図書館の内部には、文明を超えた叡智が眠っている。それを目の当たりにした彼らの瞳には、好奇心と同時に危険な欲望がちらついていた。陽光はそれを見逃さなかった。たとえ忠誠を誓った重臣であろうとも、知識という力に触れれば心は揺らぐ。人間とはそういう存在だ。


だからこそ、今、この瞬間に釘を刺す必要があった。


陽光は一歩前に出て、重厚な声で告げた。

「ここで見たものは、一切外に漏らすな。……もし破った者は――王国から抹消する」


その言葉は静かでありながら、雷鳴のように重臣たちの心を打ち砕いた。


沈黙が広がる。古代文字が赤く明滅する光に照らされ、重臣たちの顔色が次々と青ざめていく。冷や汗が額を伝い、彼らは互いに視線を合わせることすらできなかった。知識の独占を宣言した王の姿は、もはや人間を超えた権威を帯びていた。


「御意……!」

震える声とともに、一人が膝をつき、頭を垂れた。続いて他の重臣たちも次々に膝をつき、全員が頭を深く下げた。その様は、まるで神に祈りを捧げる儀式のようだった。


陽光は彼らを見下ろし、満足げに目を細めた。恐怖は忠誠を超える。禁じられた知識を掌握する者としての立場を確立した瞬間、彼は王国の頂点に立つ存在となった。


分身スパイたちが岩壁の影から現れ、無言のまま周囲を警戒している。彼らは王の命令に従い、知識の漏洩を防ぐ「影の処刑人」としての役割を果たす。重臣たちはその姿に視線を走らせ、息を呑んだ。裏切れば即座に消される――その現実を理解したのだ。


陽光はゆっくりと歩き、古代PCの前に立つ。透明板に刻まれた情報が光を放ち、まるで彼の選択を称えるかのように輝いている。王はその光を前に、再び重臣たちに言葉を投げかけた。


「この知識は、民に分け与える時を必ず迎えるだろう。だがそれは、王が選び、王が決める。勝手な拡散や利用は許されぬ。これは秩序を守るための独占だ」


その声には威厳と同時に、理知的な冷徹さが滲んでいた。独占は暴君の気まぐれではない。王国全体の安定のための戦略的判断であることを、陽光は誰よりも理解していた。


重臣たちは恐怖に縛られながらも、やがてその言葉に納得するように頷いた。知識は力だ。しかし、力を制御できる者が一人だけであるからこそ、国は乱れずに済む。陽光は自らを「選ばれた制御者」として宣言し、彼らに信じ込ませたのである。


やがて重臣たちは一斉に声を合わせた。

「御意……! すべては陛下のご判断のままに……!」


声は震えながらも確実に広がり、古代図書館の広間に反響する。その音は、王国に新たな誓約が刻まれたことを告げる鐘のようだった。


陽光は彼らの頭上に視線を落とし、静かに頷いた。こうして古代図書館の知識は、完全に王の独占となった。外部に漏れることは決してない。重臣たちの心は恐怖によって封じられ、分身スパイたちの監視が常にそれを保証する。


王国の未来を左右する「禁じられた知恵」。それは今、陽光の掌の中にある。


彼は深く息を吐き、透明板に指を滑らせた。古代文明の情報が再び浮かび上がり、光が彼の瞳に映る。そこには農業、医学、建築、そして兵法までもが網羅されていた。これを少しずつ制度に落とし込み、王国を新たな秩序へ導く。すべては彼の独断で、彼の支配の下に。


「我が王国は、知識によって変わる。だが、その知識を扱えるのは王だけだ」

陽光の声は低く、しかし確信に満ちていた。


その瞬間、古代図書館の光はより一層強く輝き、まるで王の独占を祝福するかのように広間全体を照らした。


こうして、王国の歴史に新たな章が刻まれた。知識を独占する王――陽光の時代が始まったのだ。





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