表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/183

2. 模範となる仕組み




2. 模範となる仕組み


陽光は宣言の直後、王都の中心に設置された広場の一角で、すでに準備していた新しい経済のモデルを示した。彼の前には、分身リーマンたちが設立した「共同資金庫」の建物が控えている。質素だが堅牢な造りの石造りの建物には、王国の印章が掲げられ、その存在自体が民衆への信頼の証となっていた。


「皆、よく見よ。この資金庫こそ、無利子金融の模範となる仕組みだ」


陽光の声に群衆が耳を傾ける。農民、職人、商人、さらには旅人まで、様々な人々が広場に集まっていた。民衆はまだ半信半疑の面持ちだが、目の前にある具体的な仕組みに興味を引かれ、徐々にざわめきが期待へと変わっていく。


共同資金庫の仕組みは単純だが強力である。農民が出資した金はまとめられ、新しい畑の開墾や水路の整備といった生産的投資に使われる。職人や商人が出資すれば、工房や市場の建設資金、交易の準備金として活用される。利息という名の搾取は存在せず、出資した者は出資比率に応じて利益を分け合う。損失が出れば、個人が一人で背負うのではなく、全員で分け合う。まさに協力と共有の精神が形となった仕組みだ。


民衆はその説明を聞き、徐々に理解を深める。若い農夫が隣の友人に耳打ちする。


「これなら、借金で首が回らなくなる心配はないな」

「そうだ。俺たちみんなで畑を増やして、利益を分け合えるんだ」


陽光は民衆の反応を見ながら、さらに細かく運営の流れを説明する。出資された金は分身リーマンたちが管理し、どの事業にいくら投入するかは民衆の話し合いと王の承認で決定される。事業ごとに収支は公開され、誰もが現状を確認できる仕組みだ。透明性と説明責任を徹底することで、信頼の循環を作り出す。


「利息を取るのではない。皆で協力し、利益を得る」


この言葉が民衆の心に染み渡る。これまで金貸しや高利貸しに縛られていた生活が、いかに不自由であったかを人々は理解し始める。共同で運営することでリスクも分散され、成功も共有される。王国全体が「共に豊かになる」ための土台を築く瞬間である。


建物の中では、分身リーマンたちが出資の手続きを手際よく進めていた。農民の出資は小口でも受け付け、職人や商人の大口出資も円滑に処理される。各事業ごとに、必要な資金額と期待される利益が掲示され、民衆は自分たちの判断で出資先を選ぶ。出資比率と分配の仕組みは明確に示され、誰もが納得して参加できる透明性が保たれていた。


また、損失の分担についても事前にルールが定められていた。自然災害や失敗した事業の損失は、個人が孤立して背負うのではなく、参加者全員で分配する。これにより、失敗への恐怖心が和らぎ、民衆は安心して新しい事業に挑戦できるようになる。失敗すら学びの一部として吸収され、次の挑戦に活かされる循環が生まれていた。


民衆の間に笑顔が広がる。農民は新しい畑や水路を思い描き、職人は工房の設計や新商品を夢見る。子どもたちは遊びを通じて、分配や協力の原理を自然に学ぶ。広場には希望の空気が漂い、これまでの利子中心の経済から、協力型の無利子金融への移行が目に見える形で進んでいた。


陽光は静かに満足げに微笑む。王都で示されたこの模範が、民衆の理解と協力を促し、地方や他の都市へも波及する。無利子金融の理念を目に見える形で示すことで、人々は「利息なしでも経済は回る」という信念を自らの体験として理解し始めるのだ。


さらに、この共同資金庫は王の直轄事業として運営されることで、他の権益者や高利貸しの妨害も防ぐ。分身リーマンたちが監督し、民衆の出資や取引の透明性を保証することで、不正や独占を未然に防ぎ、王国全体に模範として示すことができる。


陽光は広場の民衆を見渡し、再び静かに宣言する。


「これが我が国の新しい経済の形だ。皆で協力し、共に利益を分かち合え。これこそ、無利子金融の真髄である」


民衆は歓声を上げ、拍手を打ち鳴らす。希望と期待に満ちたその声は、王国全体に新たな潮流が生まれつつあることを告げていた。無利子金融の模範となる共同資金庫は、王都だけでなく、やがて王国全体の経済を変える起点となるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ