2. 投資ゲーム「金貨流転」
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2. 投資ゲーム「金貨流転」
城内の工作室で、分身リーマンたちは最後の仕上げを進めていた。木製の盤、色とりどりの駒、手描きのマス、そして木片で作られたサイコロ。完成したそのゲームは、シンプルながらも奥深い戦略性を秘めていた。陽光は盤面を前に、ゆっくりと頷く。
「名は……『金貨流転』としよう」
その名は、資金の循環と協力の精神を象徴する。民が手に取れば、ただの遊びとして楽しむと同時に、自然と経済の概念を学べる仕組みとなる。
ゲームの基本ルールは簡潔である。木片のサイコロを振り、駒を進める。止まったマスでは、「投資」「収穫」「損失」など、予測できないイベントが発生する。資産は金貨を模した木札で表現され、民はこれを増やすことを目指す。一定期間のゲーム終了時に、最も多くの資産を築いた者が勝者となる。
しかし、このゲームの真骨頂は「利息が存在しない」点にある。民は銀行に金を預けて利息を得るのではなく、互いに出資を行い、事業を共に育て、利益を分配する仕組みを体験するのだ。
「金を貸して利息を吸い取るのではない」
陽光は静かに語る。
「金を預け合い、事業を共に育てる。利益も損失も、共に受け止める」
ゲームの中で、民は協力の重要性を理解する。小さな村の市場に投資したり、港町の交易事業に出資したり、共同で事業を運営することで、資産は増える。しかし、失敗すれば損失も共有する。偶然の要素と戦略的選択が絡み合い、参加者は自然とリスク管理や資金運用の基本を学ぶことになる。
盤面上の村や都市は、民が実際に生活する地域に見立てられている。農作物の収穫、商隊の到着、突発的な災害や海賊の襲撃……これらすべてのイベントは、現実世界の経済活動の縮図であり、民は楽しみながら判断力を鍛えられる。
共同出資のルールは特に重要だ。民は他者と資金を出し合い、事業を始める。成功すれば資産が増えるが、失敗すれば損失も分け合う。この仕組みは、「利益を独占し、他者を搾取する」旧来の方法ではなく、協力と分配を基本に据えた社会のあり方を自然に体験させる。
分身リーマンたちは、駒の動きやイベントのバランスにも細心の注意を払った。サイコロの出目による偶然性、資産の増減、他のプレイヤーとの協力や競争……すべてが、遊びながら経済の基本原則を学ぶ教材として機能するよう設計されている。
陽光は盤面を前に目を細める。民がこのゲームを楽しみながら学べば、自然と経済の理解度は上がり、取引や投資に積極的に参加するようになるだろう。王の目指すのは、単なる財政管理ではない。民が主体的に行動し、協力と競争を通じて国全体の経済が活性化する仕組みを作ることだ。
「このゲームを広めれば、民は自ら考え、判断し、協力する」
陽光は静かに微笑む。盤上の駒が、民の成長と国家の発展を象徴するかのように見えた。
城内では、分身リーマンたちがすでに印刷や木駒の量産に取りかかっている。村や都市の市場、港、資源マス……細部まで中世風の世界観が反映されており、民は手に取るだけで没入できる。
「楽しみながら学ぶ」――これこそ、陽光が考え抜いた教育と経済発展の融合戦略であった。
こうして「金貨流転」は、単なる娯楽ではなく、国家の統治と経済活性化を同時に達成するツールとして誕生した。民はゲームを通じて自然に投資の概念、リスク管理、協力の価値を理解する。王はその過程で、民を統治し、国家の富を増大させることができるのだ。
陽光は完成した盤面を指で撫で、心の中でつぶやく。
「これで民は楽しみながら学ぶ。国家も繁栄する……我が戦略は、また一歩前進した」
城内に漂う木材と彩色の匂い、木駒が盤面を滑る音、民の笑い声……すべてが、未来の経済教育の始まりを告げるかのようだった。




