2. 反逆者への「鞭」
2. 反逆者への「鞭」
だが、城内では、表の豪華な宴の陰に隠れた暗流が静かに渦巻いていた。
老臣三名――長年王政に関わり、豊富な知識と強固な人脈を持つ彼ら――は、陽光の「飴」に惑わされることなく、自らの策を巡らせていた。密談は夜半に行われ、城の奥深く、誰も近づかぬ暗い書庫の一室で交わされていた。
「このままでは、王の権力は盤石となる……」
一人が低く呟く。
「我らが動かねば、国は新王の意のままに堕ちる」
もう一人が応じる。
しかし、陽光はすでにその動きを把握していた。
分身スパイ──顔も名も知らぬ影たちが、夜ごと城を巡り、言動や書簡を漏れなく王の耳へ届けていたのである。老臣たちの密談も、すべて彼の情報網の下にあった。
夜半、老臣たちが書庫の奥で計画の詳細を練っていると、突然、扉が激しく叩かれた。
「誰だ!」老臣の一人が振り返る間もなく、鎧に身を包んだ近衛兵が押し入り、剣を抜いた。
「王命である! その者たちは反逆の疑いあり!」
老臣たちは慌てて言い訳を試みるが、陽光の「憑依スキル」が既に発動していた。
彼の精神が老臣たちの体を支配し、口を強制的に動かさせる。
「わ、我らは……第一王子を担ぎ出し、王を排そうとした……!」
城内の静寂は、重く、冷たい緊張に満ちた。夜風が窓を揺らす音さえも、刑罰の鐘のように響いた。
翌朝、広場には民衆が集められた。噂が瞬く間に町の隅々まで届き、人々は好奇と恐怖の入り混じった表情で王宮前に集まる。捕らえられた老臣三名は、縄で縛られ、膝をつかされている。日差しの中で震える彼らの影は、彼ら自身の力の無力さを象徴していた。
陽光は玉座の代わりに、高く築かれた壇上に立った。
群衆を見下ろす瞳は冷徹そのもので、微笑みひとつも浮かべない。
「この者たちは、王位を簒奪し、国を乱そうとした。許すことはできぬ」
老臣たちは必死に抵抗の意志を見せるが、口を動かすことすら許されない。陽光の憑依スキルによって、民衆の前で彼らは自らの罪を吐かされる。
「わ、我らは……第一王子を担ぎ出し、王を排そうとした……!」
その声は、震えと恐怖に満ちていた。民衆の間にざわめきが走る。耳にした人々は恐怖で体を震わせ、同時に王の決意の深さを悟る。
陽光はゆっくりと手を上げ、群衆を見渡す。その目に迷いはない。
「斬れ」
近衛兵の剣が空気を切り裂き、老臣たちの首が石畳に落ちる。赤い血が冷たい石の上に広がり、太陽の光を受けて鮮やかに輝いた。群衆は息を呑み、叫び声も上げられない。恐怖と畏怖が、広場を支配した。
この一斬りで、王の意思は明確に示された。裏切りは許されず、反逆は即座に消し去られる。民は目の前の光景から学んだ。新王は、表の豪華な「飴」だけでなく、裏の「鞭」においても一切の躊躇を持たぬ者であると。
その日以来、城内に流れる空気は一変した。重臣たちは心の奥で、陽光の権力の確かさと恐ろしさを噛みしめる。民衆もまた、歓喜と恐怖の二重の感情を抱きながら、王の統治に従うしかないことを悟る。
陽光は広場を後にしながら、冷たい風を受ける顔に微笑を浮かべた。
「飴で操り、鞭で固める」
その統治の方針は、すでに盤石であった。民も臣も、誰も逆らうことはできない。
城の奥では、分身スパイが静かに影を潜め、次の動きを報告している。王の目は、未来を見据えて冷徹に光っていた。




