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第6話:「中枢決戦──ダンジョンコア暴走、マスター覚醒の刻」



# 第6話:「中枢決戦──ダンジョンコア暴走、マスター覚醒の刻」


雷鳴公子ダンジョン──その最下層、第9層。

そこに鎮座する“ダンジョンコア”は、静かに、だが確実に暴走の兆候を示していた。


「マスター、緊急事態です。全層にわたってシステム負荷が異常上昇中。このままでは“ダンジョンコア過負荷暴走”による全機能停止に至ります!」


管理AIアリスの声が、冷徹な警告音とともに鳴り響く。

ダンジョン全機能停止──それは、雷鳴公子ダンジョンそのものの死を意味していた。


「……来やがったか、ダンジョンの心臓発作ってやつが」


馬場義則は、ゆっくりと懐から一枚の黒いカードキーを取り出す。

その目に浮かぶのは、かつて営業現場で夜を徹して戦った“戦友”の姿だった。


「アリス、召喚コードを解放しろ。“俺をシステム対応漬けにしてくれた、あの人”を呼ぶ」


【召喚:伝説のブラック企業SE──御厨みくりや 沙耶さや


光の中から現れたのは、ジャージ姿にボサボサの髪。

片手に“神速コマンドキーボード”を持ち、目の奥に“絶対解決主義”を宿す女SEだった。


「──義則、また現場トラブルかい。何度目だ、これで」


「……御厨さん。“現場の空気”を上書きできるのは、あんたしかいない」


「仕方ないね。あの時言っただろ? “お前の営業対応はSE並み”だって。

条件付きで受けてやる。勿論、“お辞儀無し”は却下だよ?」


「当然だ。“マスターの礼”で迎えるさ」


義則は深々と頭を下げる。

“頼む”の礼ではない。“信頼を預ける”礼だった。



第9層──ダンジョンコアルーム。


眼前に広がるのは、魔力とデータが錯綜する光の奔流。

ダンジョンコアは、暴走によって無数のエラーメッセージを吐き出し続けていた。


【ERROR:自律制御AI 負荷超過】

【WARNING:コア同期ミス 43,211件】

【CRITICAL:システムフリーズ予測 92秒後】


「くっ……このままじゃ、9層どころかダンジョン全層が崩壊する……!」


しかし、御厨沙耶は冷静だった。

キーボードを肩に担ぎ、義則に向き直る。


「──義則。お前、“営業の時”にどうやって現場を切り抜けてた?」


「……その場の空気を読み替えてた。“ルール”じゃなく、“空気”を」


「だったら行ける。このダンジョンコアのシステム設計は、最終的に“マスターの意志”で全層上書きできる“現場型インフラ”さ」


「──つまり、“俺が現場で空気を書き換えれば”いいんだな」


「その通り。今までお前がやってきたこと、そのまんまをここでやればいい。行け、馬場義則!」


御厨沙耶がダンジョンコアにコマンドを叩き込む。


【コア権限、マスターに譲渡──承認】



義則は駆けた。

コア空間に広がる“システムメモリ領域”を、疾走する。


彼の耳に──各層の“現場の声”が響いてくる。


──2層・農業層の農夫たち。

「腐らせなかった!無添加でやり抜いた!」


──5層・科学層の研究者たち。

「名誉は売らない。でも未来は掴み取る!」


──6層・ダンジョン街の商人たち。

「裏ルート幻想? 俺たちが現場で潰した!」


──8層・軍事層の兵士たち。

「マスターの礼には、俺たちの命で応える!」


全ての“現場の物語”が、義則の背に乗る。

ダンジョンという巨大な“現場”が、彼を押し上げていた。


「わかったよ、みんな──“俺が、お前らの空気”を正す。

“お辞儀一発で全層を正常化”してやる!」


義則は、ダンジョンコアの中枢に立ち、一礼した。


その瞬間だった。


──“雷鳴”が空間を満たし、コア領域に奔雷が走る。

全てのエラーメッセージが音を立てて消滅し、同期ミスが次々に修正されていく。


【SYSTEM:マスターの意志を受信。強制同期修復開始】

【ERROR COUNT:43,211 → 0】

【全システム正常化──完了】



「マスター、ダンジョンコア完全復旧!

全層システムが正常稼働を再開しました!」


アリスの報告が、ようやく安堵を含んだ声色になる。

義則は静かに息を吐き、隣に立つ御厨沙耶に向き直った。


「ありがとう、御厨さん。“じゃない礼”でこのダンジョン守れたよ」


「ふん、営業時代の現場力が、異世界で通用しないわけがないさ」


“営業の現場対応力”──それは、マニュアルを超え、“場の空気”を制御する力。

そしてその力こそが、ダンジョンを暴走から救ったのだった。



雷鳴公子ダンジョンは、中枢の崩壊危機を乗り越えた。

だが、義則の戦いはまだ終わらない。


「マスター、次は──ダンジョン外の国家連盟から“国際標準化圧力”がかかっています」


「来たか……“外圧”との全面対決。

なら、こっちも“交渉の現場叩き上げ”で迎え撃つしかねぇな」


雷鳴公子ダンジョン、“外交現場決戦”編が幕を開ける──。




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