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# 第4話:「ダフ屋狩り──雷鳴公子の鉄槌」




# 第4話:「ダフ屋狩り──雷鳴公子の鉄槌」


雷鳴公子ダンジョン、第6層。

そこは地上直結の“ダンジョン街”として、交易と観光の要所となっていた。

多種多様な店が軒を連ね、地上から訪れる旅人や商人たちがひしめくその場所は、ダンジョンにおける“表の顔”とも言える。


だが──


「マスター、大変です。

“エレベーター乗車券”がダフ屋連中に流通を押さえられています!」


管理AIアリスの声が響いた。

馬場義則は深くため息をついた。

「……あれほど“公布カードがあれば誰でも使える”って言ったのに……」


便利なインフラには、必ず“悪用する奴”が出てくる。

それは営業時代、販促イベントを潰して回った輩たちと何ら変わらない。


(……こういう時こそ、“現場の叩き上げ”だ)


義則は懐から、一枚の黒いカードを取り出した。


「召喚する。“営業現場仕込みの、喧嘩上等警察官”たちを」


【召喚:現場警邏部隊・クロスシフト】



翌朝──

6層ダンジョン街に降り立ったのは、スーツと警棒、時に鉄拳制裁を愛する精鋭たちだった。


「ご無沙汰してます、マスター!現場叩き上げの“実地巡回警邏部隊”、クロスシフトです!」


隊長は“元・鉄道警備隊長”の男、轟木とどろき

義則が夜勤コンビニ時代、迷惑客対策で“裏ルート”を紹介してもらった伝説の現場屋だ。


「ダフ屋なんざ鉄道時代に掃いて捨てるほど潰してきましたぜ。

やることは一緒、“流通の正常化”っすよ!」


「頼りにしてるぜ、クロスシフト!」


義則は彼らに全権を託し、ダンジョン街の浄化作戦が始まった。



ダフ屋の手口は巧妙だった。

公式の乗車券発行所の前に“相談屋”を構え、

「特別ルート」や「時間短縮」を謳って高額の“優先乗車券”を販売する。


「こっちに並んでもらえれば、今すぐエレベーター乗れますよ〜。

時間は金ですよ!」


観光客や商人がその言葉に惑わされ、ついつい足を運んでしまう。

“古典的”だが、効果的な手法。

義則の目が険しくなる。


「チッ……古典的だが厄介な手だ」


だが、ここでクロスシフトの“鉄板ルーチン”が動き出す。

鉄道時代から受け継がれてきた、“ダフ屋潰し三段活用”である。


──手順1:“聞き込み”と称したダフ屋囲い込み

──手順2:“誰が許可したんだ?”攻撃

──手順3:“こっちで話を聞こうか”連行


「おう、アンタ。“優先乗車券”って、ダンマスの許可得てるか?」


「い、いや、それはその……」


「ほう。なら、こっちで話そうか。わざわざ専用の“地下懺悔室”用意してるからよ」


“懺悔室”──正式には“虚偽取引告解エリア”。

ダンジョン内に設置された魔法結界で、嘘をつけば舌が痺れ、声が詰まる。

ここに送られた者は、例外なく口を割った。


「おい、こっちだ。“懺悔室”だぞ」


「い、いや……おれたちはただ、便宜を……」


「便宜を測った結果がこれだよ。さあ、入れ」


次々とダフ屋たちが“懺悔室”送りとなり、白状した。


──一方、その頃ダンジョン街では──


「乗車券は、ダンジョン公式カウンターから無料で発行されます!」

「ダフ屋行為は違法です!皆さん、正規の窓口をご利用ください!」


クロスシフトの“広報班”が、街中で呼びかけを続けていた。

スピーカーを使い、公式の“無料乗車券”の存在を徹底周知する。

ダフ屋の幻想を壊すには、正規ルートの“物語”で上書きするしかない。


義則はその様子を見つめながら、静かに頷いた。


「現場対応ってのは、結局“物語”で対抗するしかないんだよな。

連中が“得する裏ルート”を煽るなら、こっちは“平等の便利さ”を徹底的に叩き込む」


そのために必要なのは、力だけじゃない。

“信用”と“実直さ”を武器に、地道な周知戦を続けること。

営業時代、販促イベントで学んだ“泥臭い戦術”が、今まさに活きていた。



数日後──

クロスシフトによる“ダフ屋根絶作戦”は成功した。

裏ルートを囁く連中は全て懺悔室送りとなり、街は元の秩序を取り戻した。


エレベーター乗車券の発行所には、以前のように穏やかな行列ができ、観光客も商人も安心して利用するようになった。


「これにて、6層ダンジョン街の流通は正常化しました。

次は、いつでも呼んでください、マスター!」


クロスシフト隊長・轟木が、義則の前で敬礼した。

義則もまた、深く、だが堂々とした礼で応える。

“頭を下げる”ではなく、“信頼を返す”礼として。


「ありがとう、クロスシフト。

……次は、“8層・軍事層”だ。名ばかり精鋭たちを叩き直す時が来た」


雷鳴公子ダンジョン──

秩序を保つための闘いは、まだ始まったばかりだった。


──つづく。





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