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パチンコをテーマにした作品

異世界パチンコ☆ディストピアの/はじまり☆はじまり

わずか一代にして巨万の富を築いた稀代の傑物商人、女王とも称される講釈令嬢は、実は巷で噂の転生者であった。


異なる世界で生を送り、我々の想像しえない発展した文化を持ち込み、この世界をも発展させていく正真正銘の天才である。


今回は、彼女が持ち込んだ素晴らしき文化である「パチンコ」についてみていこう。


(中略)


連日のように、支配人たる彼女の部屋には人々が押し掛ける。老若男女、これが平民から貴族までというのだから驚きだ。


「どうか、どうか少しでもお金を貸していただけないでしょうか。厚かましいお願いですが、生活のためのお金まで使ってしまって......その分をここで稼ぐなど面の皮が厚いと思われてしまうでしょうが、それでも......」

「いえいえ、お気持ちはよくわかりますとも」


赤いドレスをまとった彼女は常に笑みを浮かべている。その姿にはもはや後光が射していると言ってもいい。彼女は決して断らないのだ。


「お金はもちろん、無理のない範囲でお貸ししましょう。もちろん無条件とはいきませんが......でもあなた、ギャンブルにやみつきになってはいけませんよ?」


苦笑と共に差し出される金貨。隣で控えている秘書が、彼らの身辺を語る通りに書き留めていく。


彼女の非凡なる点は、彼ら彼女らの情報を得て、それを取り立てに用いることではない点であろう。実際、酒場ではパチンコに負けて逆恨みに、借金を踏み倒したと武勇伝のごとく語るものもあるという。


彼女が求める情報は、「自分が知っている他人の弱味」である。


実在する、誰か他の人物。親族でも、第三者でも、同僚でもいい。確かな情報と引き換えに、彼女は金を貸す。自分自身の身辺を語るより、皆口が軽いと彼女は語る。


「結局のところ、他人なんてどうでもいい。それに尽きるでしょうね」


冷静に、彼女は分析する。


「世界が性善説で回ってるなんてのは、せいぜいおうちで語られるルサンチマンにすぎません。人々は、確かに善人であろうとする。自分のけつに火がつくまではね(この表現を、彼女は鈴を転がすような声で笑いながら言った)」


それにしても、情報料として不釣り合いではないか?


「一度それに成功したら、味をしめてリピートしてくれるんですよね。で、その情報のベン図を拡大していったら、やがて一世帯、一町村、って感じでカヴァーできるようになります。それに加えて皆が換金できるとわかり始めた個人の情報......これは、情報戦において有利になりますね」


でも実際は、自分の趣味なのだ。女王は語る。


「私は自分に与えられた仕打ちを、他の方にも味わっていただいてます。要するに、「希望のない人生なんてない」ってね。見せかけだけでも希望があるから、人生は辛いんです。それがパチンコであり、セイフティ・ネットであり、福祉であり、要はシステムですね。


今教育者の方々が来てるんです。本来子供たちに還元すべき金を使い込んでしまって、夜逃げの予定みたいですね。あの地域は元々識字率が低かったから、今回は債権を回収する形で貧困をもたらして、知識層の緩やかな衰退を招いてみたいと思います。やっぱり、バカは騙しやすい。無知な人間からはいくらでも搾り取れますから」


女王の発する言葉は難解で、その言い回しは異世界由来のものであるという。

「私どもでも理解しがたいのですが、取引的に儲けられるならそれでいいでしょう」と苦笑するのは取引先の商人である。


「我々にとって重要なのは富であり、金銭ですから。難しいことは学者先生や賢者の方々が考えればいい。商人の仕事は利に敏く、機敏に行動することです」


最後に、女王が近々領地を発展させたということで国王陛下直々に爵位を賜るというめでたい話で締め括りたいと思う。陛下は領地のパチンコ店を視察し、これに夢中になられた。早速国庫にも手を付けようかとして大臣に止められるという喜劇的な一幕も。都にも是非設置してほしいという声が多数上がっているという。


これを機に、女王はさらなるパチンコの利益還元を約束された。現在のパチンコは1/100のカクリツで大当たりするのだが、一度大当たりすると一気に当たりやすくなる「らっしゅ」と呼ばれる特殊な状態になるという。従来では2ぱーせんとであったそれが、3倍の6ぱーせんとにも上昇。


いずれ、農民から富豪へと成り上がる成功者たちの姿を拝めるのもそう遠くないかもしれない。



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