私は貴族令嬢リリア・アルバ 2
「うええええええええええん!」
ぐちゃぐちゃになった顔と涙と鼻水でドレスが汚れている。
リリアがどれだけ泣いていても誰も慰めには来ない。
様子を見にくる者も誰一人いない。
この流れはずっと何年も続いている。
リリアは元々母親譲りの朗らかで整った顔造りであった。
しかし、母不在で父からの愛情は望めず、兄からは辛辣な言葉だけを与えられ、性格も容姿もおかしくなった。
寂しさや悔しさを食い気に走り、毎晩暴食を重ねた結果、体のパーツ何処かしこにも分厚い脂肪を纏う巨デブになっている。
また、満たされない気持ちを高額なドレスや宝石を手に入れる事で一時的な欲求を満たしてい醜い身体という自覚はあるが(兄から頻繁になじられる)、どうにもできない。
むしろ開き直って
「食べるものがありすぎるんだから仕方がないでしょ!」と逆切れまでする始末。
外出や外交など出席できるはずもなく、自国や他国の知識もマナーも全く身に付いていない。
そんなリリアなので、周囲の貴族からも評判が悪く縁談も全く挙がらない。
あと半年後にリリアは隣領地の修道院に身を置くことになる。
修道女になるわけではないが、いわば追い出しだ。
アルバ家と取引があるウェイズ家が多額の寄付金と引き換えに引き取ってもらう算段だ。
ウェイズ領地は貴族の格は高いものの資源が少なく、末端まで十分な暮らしが保障できていない。
今後無期限に暮らす修道院ももちろん質素で治安もあまり良くない。
リリアの待遇はしばらく現在と同等の暮らしを援助するだろうが、兄ケントが本格的に家業を継ぐとなれば徐々にリリアと家の繋がりを切っていくだろう。
将来リリアがどうなっても知った事ではない。
それを含めて隣領地に託したのだ。
ある日も、リリアはケントに心無いことばかり言われ傷心だった。
「もういい!お前と話しているとこっちまで頭がおかしくなりそうだ!こんなクズのような妹を持って僕は不幸だ!
もう帰るよ!デリス!この愚か者には反省が必要だ!しばらくこの屋敷には誰も入るな!」
「承知しました、ケントぼっちゃま。」
「いやよ!また一人の時間になっちゃう!寂しいの!だれか一緒にいて!
お兄様!デリス!」
バタンと荒々しくドアを閉め、ケントもデリスも去ってしまった。
「ううううう。ケントお兄様は何故妹である私にここまで酷いことが言えるのかしら。
私は何か悪いことでもしたのかしら。うううう。
私の姿も存在全てが醜いってどういうことなのか誰もちゃんと教えてくれない。
お兄様の言っていることがわからない。
私が必要のない愚か者ということしか分からない。。」
リリアは泣きじゃくりながら上を見上げた。
「お母様の形見のイヤリング。昨日デリスが掃除した時、あの棚の上にしまっていた…。
あれをつけて今夜は寝よう。」
リリアはイヤリングがしまってある高い位置にある棚に手が届くよう重い体を起こし、椅子を移動させ、自力で椅子に登った。
「あと少しでイヤリングに手が届く…。」
頑張って爪先立ちになり、イヤリングを手に取った瞬間
リリアの体の重みで椅子の脚が一本折れてしまい、
リリアはバランスを崩して頭から地面に倒れてしまい
そのまま意識がなくなった。