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白馬の王子と黒馬(こくば)の王子  作者: あぷりこっと
王城事件編 第五章 ~浮上する名~
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第五章 ~浮上する名~

 城下巡りをしていて謎の男たちに誘拐されてしまったアレクとセイブル。その時、2人がとった行動とは? そして2人は無事に脱出できるのか!?


 2人の脱出劇?が今、幕を開ける!!(かもしれない)



1.策


「セイブル王子、紙飛行機って知ってますか?」

 私─アレクシス・ベネットは渡して貰った書物を見ながら言う。

「紙飛行機?」

「はい。紙を折って、飛ばすんです。」

 私は一つ折ってみる。

「これを窓から飛ばせば、誰か気づいてくれるかもしれません。」

「なるほど。俺も手伝う。」

「ありがとうございます。」

 私たちは一つ一つ折って、外へ飛ばすを繰り返す。

 この書物は、セイブル王子を守っただけあって分厚く、その分枚数も多い。短剣が刺さっていた穴で二つに分ければ、その分多く作ることができる。

 問題はラリネとバリトに気づかれる可能性が高いってこと……。だけではない。

「ヤバいな。」

 セイブル王子が呟く。

「え?」

「位置や高さからして、ここはトライヤン王国の大時計台だろう。そして、この周辺は人通りが少ない。何より……、紙の材質的に飛距離が短いんだ。」

「うっ……。」

 気づいてはいた。

 だが、改めて口にされると、悲しくなる……。

「やるだけ…やってみましょう。少しでも可能性があるのなら、やる価値はあると思います。」

「そうだな。」 



2.紙飛行機


「セイブル~、アレク~!!」

 人混みが少なくなってきたとき、気づいたら2人はいなくなっていた。

 人混みに流されたのだろう。

 そう思い、ボク─フリッシュ・トライヤンは必死に2人を探している。・・・が、一向に見つからない。

 セイブルのことだ。小道に逃れて、人混みを回避すると思ったんだけど……。

「あの、すいません。・・・」

 ボクは聞き込みをしてみるけど、収穫はない。

「はぁ~。あの2人はどこに行ったんだ?」

 ボクは溜息をつく。

 さっきから胸騒ぎがする。

 何かに巻き込まれてないといいけど......。

「ねぇねぇ、ママ 見て。何か上から落ちてきたよ。」

 それは小さい女の子の声だった。

 手に何か持っている。

 あれは……、紙飛行機?

 小さい頃、母に教えて貰った記憶がある。

 紙飛行機に使われた紙には字がびっしり書かれている。

 少し、気になるな……。

「ねぇ、お嬢ちゃん。それ、お兄さんにくれないかな?」

「ん? いいよ。」

 女の子がニッコリ笑って渡してくれる。

「ありがとう。

 お母さんも、足を止めてしまってすみませんでした。」

「いえいえ。」

 2人を見送った後、ボクは女の子に譲って貰った紙飛行機を見る。

 あまり大きくないから、この紙から読み取れる情報量はあまり多くはない。けど、ボクにはわかる。これはセイブルが愛読していた書物だ。

 これが飛んできたのは「上」。

 ボクは上を見る。

 すると、いくつもの紙飛行機が飛ばされている建物があるのに気づく。

 あれは

「大時計台か!!」

 どうして、こんなことをセイブルとアレクがしたかは、ボクにはわからない。

 でも、2人がそこにいる可能性がある以上、行って確かめる価値はある、そう思った。



3.敵に回してはいけない男


 あれから、幾つの紙飛行機を飛ばしただろう……?正直覚えていない。

 残りの紙は半分を切った。

 私─アレクシス・ベネットは残りの紙を眺める。

 本当に助けが来るだろうか。

 誰か気がついてくれるだろうか……。

 不安が頭をよぎる。

 ダメだ、弱気になっては。

トントントン・・・

 誰かが階段を駆け上がって来る音が聞こえる。

 足音からして2人……。

「お前ら、何をしてやがる!!」

 バリトの叫び声が聞こえてくる。

 ということは、もう1人はラリネで間違いないだろう。

 荒っぽく鍵を開ける音。

 部屋の外からでも感じる迫力。

 自分が思っていたよりも冷静で、少し驚く。

 もう1人、階段を上がってくる音も聞こえてくる。

 ……? 誰? もう1人いたとか?

バンッ!!

 力任せにドアが開く。

 バリトがズカズカと部屋に入ってきて、セイブル王子に手を伸ばす。

「くっ……。」

「セイブル王子!!」

 バリトがセイブル王子の胸ぐらを掴む。

「何をしていたか言え。そうしたら殺さない。」

「・・・・・・。」

「言え!!」

 どうしよう。

 ラリネだけならともかく、バリトには私は敵わない。ここで、私が手を出しても、意味はないだろう。下手したら、状況を悪化させてしまうかもしれない。

 だったら……。

 私は心の中で覚悟を決める。

 セイブル王子、後で怒るかな……?

 私はバリトを正面から見据える。

「彼は、何もしていない。全て私がした。紙飛行機は助けを呼ぶために飛ばした。私だけがした。だから、彼は関係ない。彼を放してほしい。」

「アレクッ!!」

 セイブル王子が叫ぶ。

 せめて、セイブル王子だけでも助かってほしい。

「へぇ~、アレクが、ねぇ……。」

 ラリネが近づいてくる。

 今までラリネから感じたことがなかった殺気が、私を襲う。

「アレク、わかってる? 君が何をしたか。今、どういう状況か。」

 ラリネが拳を握る。

 私は反射的に目をつぶった。

 だが、痛みの前に、1人の男の人の声が聞こえてくる。

「男が、無抵抗の女の子に手を上げるとは、感心しないな。」

 この声は......。

 私は目を開ける。

「誰だ、お前。」

「ボクはこの国の第1王子、フリッシュ・トライヤン。」

「「!?」」

 来て、くれたんだ……。

 私は体の力が抜け、その場に座り込む。

「今ボクは、ボクの可愛い弟と、可愛い使用人をこんな目に遭わせたことに、少々苛立ちを感じていてね……。手加減出来るかわからない……。」

 いつも爽やかで、優しい彼の放つ殺気は……恐ろしく感じる一方、美しいとも感じてしまう…。

 それは一瞬だった。

 フリッシュ王子がその場から消えたかと思うと、ドアの外から部屋の奥の方にいる私たちのすぐ近くにいたのは。

 遅れて、ラリネとバリトが力なく倒れる。

 何が……あったの……?

「心配しないで、峰打ちだ。」

 フリッシュ王子がもう気を失っている2人に向けて言う。

 もしかしなくても……

「大丈夫? アレク、セイブル。」

「はい。」

「あぁ。」

 このフリッシュ・トライヤン王子を……敵に回してはいけない……な。

 

 っというか、剣に「峰」なんてあったっけ?



4.あの方々


 その後、役人が到着し、ラリネとバリトは連行されて行く。

 それを見送りながら、私はふと疑問が頭に浮かぶ。

「1つ、訊いていい?」

「なに? アレク。」

「あなたたちは、私たちをあの時、本当に殺すつもりだったの?」

 あの時とは、ラリネとバリトが私たちを見に上がってきた時のことだ。

「何が言いたい。」

「ラリネに名前を訊いたときとか素直に教えてくれたし、セイブル王子をバリトが乱暴に下ろした時も、らラリネ、本気で叱ってたし、バリトは乱暴に振る舞っていながらも、わざと書物に短剣を刺してたりしたし。紙飛行機の時なんて、気づくの明らかに遅かった。それで上がってきた時なんて、一切剣を抜こうとしなかった。それってつまり、私たちを殺す気も、傷付ける気もなかったってことでしょ?」

「でもアレク、ボスの命令(・・・・・)だったからした演技(・・)かもよ?」

「それでも、私だったら、生意気な娘に傷の1つや2つ、付けちゃうよ。」

 それを聞いて、ラリネとバリトは呆然とする。

 そして、ラリネがもう我慢できないと言わんばかりに笑い出す。

「何だよ、それッ……」

 あっ、ラリネが心から笑った顔、初めて見た。

 バリトの顔も少しほころぶ。

 やっぱりこの2人、根はいい人なんだろうな~。

 「お前ら、水を差すようで悪いが、俺も1つ質問していいか?」

 セイブル王子が言う。

「何ですか?」

「黒幕─『あの方々』って誰だ?」

「「!?」」

 2人が息を呑む。

 『あの方々』……。ラリネたちが話してたやつか。

「言ってもいいが、絶対にお前たちは信じないと思うぞ。」

「構わない。言ってみろ。」

「自分たちに依頼してきたのは2人はペデット・バスク、テナー・バスク─そう名乗ってたよ。」

「「「!!??」」」

 なっ!?

 ペデット・バスクとテナー・バスクってつまりペデット様とテナー様でしょ!?

 王子たちの側近である2人が真犯人だと言うの!? 信じられない。

 だが、ラリネが嘘をついているようには全く見えなかった。

「そうなか。教えてくれて、ありがとな。」

 セイブル王子の一言を聞いた後、役人たちは止めていた足を動かし、ラリネとバリトの連行を再開する。

「セイブル、どう思う?」

「黒幕が嘘をついた可能性があるから、なんとも。

 まぁ、俺たちを狙うのがこれで最後になりそうにないことはわかった。」

 え?

「どうしてそう言い切れるんですか?」

 真犯人は捕まらなかったが、だからといってそう言い切れるものだろうか……?

「これを見ると、な。」

 セイブル王子は私たちに一本の短剣を見せてくれる。

 これはバリトがセイブル王子はを刺すときに使っていた短剣だ。

 そして、その剣の柄に……

「『ハトの印』!?」

「そういうことだ。」

 前の事件と同一犯……。犯人は今回を含め2回も犯行をしたことになる。

 二度あることは三度ある ってことわざがあったな……。

「まぁ、それは置いといて。アレク、1つ言いたいことがあるんだが……。」

「は…い……?」

 私はセイブル王子の形相を見て、当たりがつく。

 さっき、セイブル王子を死ぬ覚悟で助けようとしたことに怒っているんだろう。

 

 私はその後、こっぴどく叱られた。セイブル王子が「言いたいこと」は1つどころではなかった。

 

 何事も無くは……ではなかった城下巡りは、無事に?幕を閉じた。

 だが、それに伴い真犯人として浮上したのは、2人の王子の側近─ペデット・バスクとテナー・バスクの名だった。 

 そして、あの火事の事件と同一犯であることを示す『ハトの印』……。

 本当の黒幕は誰なのか……。

 謎は深まるばかりだった。

 どうも、こんにちは。

 どうにか前回の話から一週間で書くことができ、安心しているあぷりこっとです。

 今回はアレクとセイブルの脱出大作戦とのことで、少しヒヤヒヤしましたね……。

 実は私も先日ヒヤッとすることがありました。

 なんとかなりのサイズの百の足と書くあれが布ごしに這ってきたんですよ……。

 私の住んでいる家の裏に山があり、家自体もかなり古いので、よく奴らは出現するのですが、あぁいうのはマジでやめてほしいです。奴らが来なくなる粉とか奴らが食べて死ぬ薬とか、奴らが嫌がる匂いがするやつとか……いろいろ使って対策はしているんですけど、突破して入ってくるんですよね……。マジ、勘弁してほしいですね(笑)。

 まぁ、大事なかったですけど。

 はっ、すみません、こんな暗い話題で。

 

 最近、アレクはセイブルばっかと一緒にいるので、次回はフリッシュと一緒にいる時間が増えたらいいな~っと思ってます。フリッシュの過去も描こうと思っているのですが、ちょっと暗いので覚悟していただければ助かります。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また次回、お会いしましょう。バイバ~イ!

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