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白馬の王子と黒馬(こくば)の王子  作者: あぷりこっと
王城事件編 第三章 ~城下町で~
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第三章 ~城下町で~

前の事件から一ヶ月。

城下町に行こうと王子二人に言われ……。


1.新たな出会い


 私─アレクシス・ベネットは今日の仕事を終え、自室のベットに寝っ転がる。

 一ヶ月ぶりの仕事の復帰なだけあって、かなり疲れる。筋肉が幾らか落ちたせいか、思いの外大変な仕事だったんだな~っと思わずにはいられない。

「明日も、頑張らないとな......。」

コンコン

 誰かがドアをノックする。

「は~い。」

 誰だろう?

「どちらさ......!?」

 ドアを開けて私は驚く。

「? そんなに驚いて、どうした?」

「セイブル王子......、どうしてここに?」

 ここに王子自ら来ることは、普通に考えて、あり得ないことだ。

「なぜって......。」

 セイブル王子が決まりが悪そうに言う。

「お前を攫いに来たに決まってるだろ?」

「!?」

 いや、これを言ったのはセイブル王子じゃない。トーンは低かったけど、今の声は多分...

「フリッシュ、ふざけるな。」

 やっぱり。

 フリッシュ王子がセイブル王子の後ろから、ひょっこり顔を出す。

「え? 違うのか?」

「違う。話があるから呼びに来ただけだ。ちょっと俺の部屋に来てくれるか?」

「え? あ、はい。」

 セイブル王子は身を翻し、先頭を歩いて行く。

 こうやって堂々と歩いているのを見ると、流石王子だな~っと、改めて思う。

 

「着いたぞ。」

 セイブル王子がドアを開く。

 まず思った感想は、セイブル王子の部屋だな~ってこと。本棚大きい。書物がいっぱい。余計な物がなくて、すっきりした部屋だ。

 そして、ソファに机を挟んで向かい合って座っている男女がいる。

 二人はフリッシュ王子たちを見ると、立ち上がる。

「お疲れ様です。」

「セイブル王子、その人は誰ですか?」

「この()は使用人のアレクシス・ベネット。一ヶ月前の事件の時に、セイブルが助けて貰ったんだよ。」

「あぁ、そうだったんですね。私はペデット・バスク。フリッシュ王子の側近をしてます。」

「アタシはペデットの妹のテナー・バスク。セイブル様の側近をしてます。」

 なるほど、二人は側近なんだ。

「二人ともお疲れ様。」

「いつ戻ったんだ?」

「先程、帰ったばかりですよ。」

 親しげに話し始める4人。

 ペデット様はクールな感じだけど、テナー様は明るく元気で、対照的な兄妹だな~。

 にしても、ペデット様がフリッシュ王子の側近で、テナー様がセイブル王子の側近か。性格的に逆な気がする。つまり、フリッシュ王子がテナー様で、セイブル王子がペデット様の側近ってこと。

 すると、フリッシュ王子が私の疑問を察してくれたのか、教えてくれる。

「ちなみに、セイブルの側近がテナーなのは、場を和ませやすくするため。ほら、こいつ、強面でしょ? 会議のときとかで、ボクがいなかったりすると、皆怖がったり、緊張したりするらしくて。だから、ムードメーカーとして、テナーが就いたわけ。」

「それと、フリッシュの側近が女だと、フリッシュが口説いたりして、テナーがやりづらいだろ?

 それに、フリッシュは頭が悪いから、側近に少しでも補って貰おうと、こうなったわけ。」

 あぁ、なるほど。つまり、バランスを保つためにこうなったと。

 私は一人で納得する。



2.ハトの印


「本題に入ろう。今日ここに集まってもらったのは、一ヶ月前の事件について、聞いて欲しいことがあったからだ。」

「聞いて欲しいこと...ですか?」

「あぁ。

 今回の事件は未だに犯人もその目的も不明だ。犯行は書物や書庫に油をかけ、外から着火したものと思われる。」

 うん、ここまでは、私も知っていることだ。

「そして......。」

 そこで、セイブル王子は間をとり、私たちを見回す。

「着火したと思われる場所の地面に『ハト』の形が彫ってあった。」

「『ハト』?」

 そう聞くと、セイブル王子はポケットから1枚の紙を取り出し、広げる。

「こんな形だ。」

 私たちはそれをじっくり見る。

挿絵(By みてみん)

 ん? これって……。

「アレク、どうした?」

「...どこかで、見たことがあるような気がしたんですが......。」

「ホントか?! それはどこだ?」

 う~ん。

 私は思い出そうとする。

 どこだろう? 最近......ではない。あれは多分、幼い頃。師匠に会った後の......、ダメだ。

「すみません。ここまで出てきてるんですけど......、どうしても、そこから思い出せなくて。」

「別にいいよ。思い出したらその時に教えて。」

 フリッシュ王子が優しくそう言ってくれる。

「はい。」

「話は以上だ。わざわざ来させて悪かったな。」

「いえ。」

 私は、そっと肩の力を抜く。

「アレク。」

 ? フリッシュ王子が話しかけてくる。

 だが、その続きを聞くことを阻むように

「何だって!? なくした?!」

 セイブル王子の声が響く。

 どうやらテナー様が大事な書類をなくしてしまったようだ。

「すみません。」

 謝っているものの、顔は笑っている。テヘペロっとか言いそうな顔だ。

「まったく......。

 取りあえず、お前の部屋にないか探しに行くぞ。」

「え?」

 テナー様が困ったような顔をする。

「何か見られてはいけない物があるなら別だが?」

「いっ、いえ、そのような物はありませんが......。」

 歯切れが悪いな......。

「だったら俺が手伝っても問題ないな。

 アレクとフリッシュ、ペデットも来るか?」

「はい、私は大丈夫です。」

「ボクも。」

「私も、妹の不祥事ですし、行きますよ。」

 

 テナー様の部屋はなんて言うか......。

 本当に女性の部屋なんだろうか? っと思ってしまうくらい散らかっている。

 これは物がなくなっても何ら不思議ではない。

「まさか、ここまで酷いとは......。」

 フリッシュ王子も思わず声に出しちゃってるし......。

「いつまで呆けているつもりだ。」

 セイブル王子の一声で私たちは捜索を開始した。

 なかなか見つからない。

 ......?

 私はペデット様とテナー様を見て、不思議に思う。

 さっきから奥にある棚をチラ見している。どうしたのだろうか?

「あっ、ありました~。」

 そう言って、テナー様が書類を掲げて喜んでいる。

 その後はテナー様、軽く叱られてたな~。

 でも、心から怒っている感じはしなかった。

 それだけ、セイブル王子がテナー様に心を許してるってことかな?



3.セイブル王子と!?


 翌日─。

 今日はなぜか仕事がない。

 っと言っても、いつもは午前中しかないのだが。

 やはり、何もないのは暇でしかない。仕事があることはある意味幸せなことなのかもとつい思ってしまう。

 そういえば昨日、フリッシュ王子は私に何を言おうとされてたんだろう。あの後、タイミングがなかったんだよな......。

トントン

「? 誰だろ。」

 私はドアを開ける。

「!? セイブル王子!?」

 びっくりして、跳ね上がりそうになるのを我慢する。

「ボクもいるよ~。」

 セイブル王子の後ろから、フリッシュ王子が顔を出す。

「フリッシュ王子も!? 一体、どうしたんですか?」

 二日も連続で王子二人が来られると、変な噂が立ちそうだな......っと、思いながら言う。

「お誘いに来たんだよ~、セイブルがね。」

「・・・・・・。」

 セイブル王子が少し赤くなる。照れているのだろうか?

 こういうところをクールなセイブル王子は滅多に見せないので、少し新鮮だ。

「城下に行かないか?」

「城下......ですか?」

 なぜ、城下に?

 私が疑問に思っていると、フリッシュ王子がクスッと笑う。

「今日ね、城下でちょっとしたイベントがあるんだよ。女の子が好きそうなイベントだし、一緒にどうかな? って。」

「わっ、私がご一緒して良いんですか?」

 私、使用人ですよ?

「もちろんだ。アレクには世話になったしな。」

 あぁ、そういうことか。

 それなら、断るわけにはいかない。っというか、断る理由ないし。

「わかりました。ちょっと支度してきますね。」

 私は部屋に戻る。

 私とイケメン王子2人で城下......。

 一人の男性が同時に女性を二人連れていることを「両手に花」って言うけど、この場合はなんていうんだろう?

 

「うわぁ~。すごい賑わってますね。」

 ここは城下町。

 私たち3人は肩を並べて歩いている。

 ......いいの? 身分的にこの歩き方で!?

 っと思ったが、王子たちにとってはむしろその方が王子のとバレづらくてありがたいらしい。

 そういえば、今日のイベントって、何だろう?

「フリッシュ王子の言っておられたイベントって、どのようなものなんですか?」

「そうだね、簡単に言えば、『愛を伝えるイベント』かな?」

「愛...ですか?」

「そう。昔この日に、ある女の子が好きな人にプレゼントをして告白したら結ばれたらしくてね。それに験を担いで、毎年この日に女の子が好きな人に贈り物をするんだ。」

 あぁ、こういうイベントだからセイブル王子が少し照れてたんだ。

「今じゃ、友だちや家族にプレゼントを渡したりする人もいるから、商人の陰謀とか含まれてそうだけどな。」

「セイブル......、乙女心を壊すようなことを言うな。」

 私はクスッと笑う。

 この二人、性格は真逆だけど、仲は良いな~。 

 一人っ子の私は少し憧れる。

「なるほど、確かに女の子が好きそうなイベントですね。」

 私たちは城下巡りを続ける。

 お菓子やアクセサリー、服に時計に......っと、いろいろな店舗が並んでいる。

 前来たときはここまで店舗があった記憶はないから、セイブル王子の言うとおり、商人たちの陰謀が含まれていそうだ。

「そういえば、アレクって好きなものある?」

 突然フリッシュ王子に訊かれる。

「好きなもの......ですか?」

「うん、食べ物とか。」

 食べ物......。

「う~ん。小さい頃からイチゴが好きですね。

 最近はストロベリーティーにハマってます。」

「へぇ~、なんか、かわいいね。」

 フリッシュ王子がニッコリ笑う。

「フリッシュ、口説こうとするな。」

「してないよ? ボクは純粋に気持ちを伝えただけだよ?」

 この二人、喧嘩しているはずなのに、見ている側はなぜか和んでしまう。

 

 あ、そういえば

「フリッシュ王子、昨日のことなんですが」

 私に話そうとされてたことはなんですか? 

 それを口にすると、大きな声にかき消される。

「ただ今、安売りセールをしていま~す。先着20名様になんと、意中の彼とお揃いができるアクセサリーをオマケしますよ~!」

 この言葉は、私たちのすぐ近くで発せられた。

 それを聞き、一瞬にして人混みが出来る。女の人たちが私たちの間を裂こうとする。

 ヤバい、このままじゃはぐれてしまう。

 そう思ったとき、誰かに右手を捕まれる。

「アレク、一旦退くぞ。」

 この声はセイブル王子のものだ。

 セイブル王子は、人混みを掻き分けて進み、人混みから逃れさせてくれる。

 ある程度行くと、小道に入り、足を止める。

 フリッシュ王子を置いてきてしまったが、大丈夫だろうか?

 そう聞きたかったが、あの状況では難しかったし、フリッシュ王子ならきっと大丈夫だろう。っと信じたい。

 ん? あれはなんだ?

「あの、セイブル王子、あれは何ですか?」

 私はとても大きな建物を見上げる。トライヤン王城とあまり変わらない高さなのではないだろうか?

「ん? あぁ、あれは時計塔だよ。トライヤン王国のシンボルの一つ。あの塔から眺めると、とても見晴らしがいいんだ。」

 へぇ~、いつか上ってみたいな。

「あの~、すみません。」

 不意に声を掛けられた。若い男の人だった。

「道に迷ってしまいまして......。」

「道ですか? どこに......?」

 私がそう言っていると、セイブル王子が私を庇うように、私の前に立つ。

「どうしました?」

「お前、気配がなかったな。何者だ?」

「え?」

 確かに、言われてみれば気配がなかった。

 セイブル王子は警戒心を剥き出しにしている。

 いくら気配がなかったとはいえ、そこまで警戒する必要があるのだろうか?

 身近に気配を感じさせない人が多いためか、私にとっては日常茶飯事だったりするのだが。

「お前、ずっと俺たちのことをつけてただろ」

「!?」

 私が驚いていると、男はニヤリと笑みを浮かべる。その直後だった。

「うっ......。」

 首筋に痛みが走ったのは。

「アレク!!」

 体の力が抜けていく私に向かって、セイブル王子は声を掛け、振り返る。

ドサッ

 もう一人、誰かが倒れる。

 逃げ、な、きゃ......。

 だが、体は思い通りに動かない。

 私の意識はだんだんと遠のいて行った......。

 どうも、こんにちは。

 挿絵を入れるのにそれなりに手間取ったあぷりこっとです。

 いや~、ホントに大変でしたよ。URL間違えて、思ってた絵が出てこなかったりして。

 作品の方はちょっとヤバい感じになってきましたね。上手く乗り越えれたらいいな~。


 え~、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。次の章も読んでいただけると嬉しいです。


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