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おにぎり片手にブラック企業の社畜サラリーマンが文学少女(聖女)と共にドラゴンを森の牛乳みたい感じにするお話

サラリーマンがドラゴンを優しくする物語です。



 掌におにぎりを載せたまま、ハジメはドラゴンと向き合っていた。一触即発、危機一髪。そんな状況にも関わらず、一日十八時間労働で月に休みが時々……みたいなブラック環境を脱したハジメに、もう怖いものはなかった。気分的にウキウキワクワクなバカンスの始まりだ!! ……錯覚だけど。


 「さあ、その聖剣でドラゴンを倒すのです!!」


 ハジメの後ろに控えるセーラー服姿の自称聖女に促され、手にしたおにぎりを、もう一度確かめてみた。


 ……おにぎりは、何回みても、おにぎりだ。


季語の無い俳句を捻ってみたが、やはりおにぎりは食べ物であって、武器ではない。しっとりとした肌触りで、ほんのり暖かかった。


 優しさの塊みたいなおにぎりを、ハジメはそっと両手の平で持ち、改めてドラゴンと向き合った。


 「……食べる?」

 「いや、別に……てか、あんたら何者?」


 極めて普通に誘ってみると、空腹では無かったドラゴンが逆に聞き返す。そりゃそうだ、いきなり目の前にサラリーマンとセーラー服姿の少女が現れて、やれ戦えだの、おにぎりを差し出して食べる? だの聞いてきたのだから。


 「わ、私は高校二年……聖女のアルテミアですっ!!」


 ((あー、そーゆー感じなのね……))


 威勢良く声を上げた自称アルテミアだったが、ハジメとドラゴンは名札の【武田 美代】の四文字から、何となく察した。


 自称聖女はさておき、ハジメは掌のおにぎりをそのままに、ドラゴンに向かって自己紹介をした。


 「あー、えっと……ハジメって言います。で、いきなりなんですが、ドラゴンって何にでも姿を変えられるって聞きましたが、本当なんですか?」

 「はぁ? お前はバカにしてんのか? 嘘ついてどうするんだよ、当たり前だろ、当たり前!!」


 たかが人間に尋ねられ、大いに自尊心を傷つけられたドラゴンは憤りながら答えます。


 「じゃあ、このおにぎりと同じ位になってみせて下さいよ、出来るかなぁ~?」

 「ばっばばばばばかにすんなクッソ! 今すぐなってやるからビビるんじゃねーぞー!!」


 勢い良く答えながら、あっという間にドラゴンはおにぎりと同じ大きさになりました。


 「おー、なったなった!! じゃあ、別名を森の牛乳と呼ばれる物になってみてください」

 「……調子乗らないでよね……」


 小さくなって威勢の削がれたドラゴンは、考え抜いた末に山葡萄になりました。


 「……食べちゃっていい?」

 「……堪忍して……」


 優しくなったドラゴンは、二人と一緒に山を降りました。



畑のミルク→ブドウ。では山の牛乳→ヤマブドウって思ったらお話が一つ出来ました。

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