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小説家になりたい!! ―呆れるほどしょうもない小説醸成術―  作者: ヤバイ物書きさん (橘樹 啓人)
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休憩時間① 颯夏の小さな悩み

全体の半分が終わりましたので、今回から休憩時間です。



※雑談編

「師匠、俺ね、今悩んでることがあるんだ」


「ん? 何だ?」


 急に話しかけてくる颯夏に対し、俺は眉をひそめながら問うた。現在、目の前で颯夏は公募に出す予定の新作のプロットを組んでいるところだった。


 ちなみに、颯夏が応募作の執筆を開始する前、つまりプロット段階にまで時間は遡っている。もっと詳しく言うと、前回の十五講における日時の約一ヶ月前という設定だ。これ以上のメタ発言は控えるけど。


 で、話を戻す。ジャンルまでは一応決まったが、詳細で躓いているらしい。俺も可能な範囲でアドバイスしてやりたいが、その悩みとやらによっては助言しかねる。


「何に悩んでるんだよ」


 もったいぶってなかなか切り出さない颯夏に少々苛立ち、重ねて尋ねた。そうしたら、颯夏はようやく話し始める。


「主人公の年齢って、どのくらいが適正とかある? 高2にしようか、高3にしようか迷ってるんだけど」


 なんだ、そんなことか。ただ、これは俺にも判断できない。あくまでも作者は颯夏だから、本人が決めるべき事柄だろう。


「師匠はどう思う?」


「なんで俺にきくんだ。お前の好きにしたらいいだろ」


「初めは高3にしようと思ってたんだけど〜、やっぱり他の作品読んでたら高2の方が割合的に見ると圧倒的に多いんだよね」


「まあな……。高3だと受験とかあるもんな。間を取って高1とか?」


 何気なく、助言してみる。ただ、颯夏は首を振るのだった。


「それはダメだ。今書いてる主人公は、前の年のトラウマを背負ってるっていう設定だから、高2以上じゃないとダメなんだよ」


「あぁ、そっか……」


 だが、そこまで悩むことじゃない気もする。それよりも、ストーリーの方を練った方が時間的にもいいんじゃないか?


 少々呆れていると、いきなり颯夏が立ち上がった。


「こうなったら……!」


 と低い声で呟くので、俺は一瞬たじろいだ。何か、思いついたのだろうか?

 しかし、次に颯夏がポケットに手を入れて取り出したのは、十円玉だった。


「これに賭けよう」


 コイントスかよ! 呆れるを通り越して内心引きながら、俺は眼前の少年を見上げる。


「自分で決められないなら、こうするしかないじゃない」


「いや、それくらい自分で決めろや! どこまで優柔不断なんだよ!」


 そう言う俺をやつは無視し、


「表なら高2、裏なら高3」


 と独り言を大きな声で言いながら、思い切りコインを高く放り上げた。

 そして、


「スプラーッシュ!」


 という謎の奇声を発し、バチン! と右手で強く左手の甲を叩く。ゆっくりその手を上げると……そこには何もなかった。


「あっ、消えた!」


 颯夏は驚愕したように、目を見開いた。さらに顔を上げてこちらを見、


「すごいよ、師匠。手品みたい!」


「下手クソか!」


 絶対、落としただろ、それ。できないなら、やらなきゃいいのに。

 俺は肩を落としつつ、仕方なくやつの迷子になったコインを探し始めた。


 コインはすぐに見つかった。テーブルの下にあった。

 裏だった。ということは……高3か。まあ、最近のラノベというと高1か高2っていう印象が強いから、斬新さで言うと、わりとアリかもしれない。


「おい、裏だったぞ」


 俺は手のひらにコインを乗せ、颯夏のやつに差し出した。見つかって嬉しかったのか、颯夏は顔を輝かせた。しかし、次にこう言うのだった。


「あー、でもやっぱり、高3だと色々設定変えないといけないし、不都合なことが多いから、高2にするよ」


 じゃあ、今の時間、何だったんだよ。また颯夏のサボり癖が生んだ、「何気なさを装いながら話を脇道にそらす方法」に違いない。


「よし、じゃあ主人公の学年が決まったところで、一緒に構成考えような!」


 威圧的に声を強めると、颯夏の顔色が変わった。


「ああ、じゃあもうちょっとだけ考える!」


「はい、時間切れー!」


「は……はい……」


 颯夏は、しゅんっと肩をすくめた。ちょっと威圧的すぎたかな?

 だが、こんな調子だと、目標の賞の締め切りに間に合わない可能性が出てくる。

 まったく、誰だよ、こんな面倒くさがり屋を入門させたのは。あ、俺か。

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