謎のパーティ招待
あらすじ:美女について行く
「私はエリナよ、よろしくね」
「俺はクウトだ」
簡単な自己紹介をしたのち、仲間の元へ案内される。
ギルドの酒場で3人がテーブルを囲んでいた。
ギルドに入る時に見えた、木製のビールジョッキでお酒を飲んでた大男と魔導士風の青年、
そして小柄で尖った耳の少女が居た。
「エリナ、こいつ大丈夫なのかよ」
座った姿勢で下から見下ろすという、体に似合わず器用な芸当を見せるこの大男はアズラックというらしい。
「そうですね、彼からは大きな力を感じませんが」
温度の無い声に距離を感じる魔導士風の青年はクレス。
「エリナが言うから間違いないと思うんだけどね」
他にも何か言いたげなこの小柄な少女はアリーシャだそうだ。
3人とも心配になるのももっともだ。
俺はこの世界に降り立ったばかりで戦闘スキルなんて皆無だ。
魔法の世界であることには間違いないのだが、
魔法というのを使ったことが無いので魔力なんてのが俺自身にあるとは思えない。
「ねえ、クウト」
「あなたはこの世界に来た時何か持ってきたよね?」
エリナは確信に満ちた目で尋ねてくる。
「星形のアクセサリーの事か?」
俺はそう答える。
見せてとでも言ってきたら拒否するつもりだが、そうゆう雰囲気ではなさそうだ。
「じゃあ私が言ってることは間違いないわね」
エリナは即答する。
「つまりあれか、お前と同じってことでいいんだな」
アズラックは答える。
同じ…?
「そうよ、クウトはこの世界とは別の世界から召喚されたのよ」
エリナはなぜそれを知ってるのだろうか。
「しかし、腑に落ちないですね」
「それが本当だとしたらなぜ王宮に居ないでこんなところに居るんですか?」
クレスが異を唱える。
どうも別世界から召喚された人は王宮に居るのが普通みたいな口ぶりだ。
俺は口を開いた
「エリナと同じというのはつまり・・・?」
「クウト正解よ、私も召喚された口なのよ」
エリナはそう答える。
確かに異世界召喚されたら王宮でのもてなしや、援助金や仲間などを斡旋されて旅立つのが、
ラノベでの定番だ。
だのに俺の場合は裏路地にひっそり放置されていたわけだ。ねぇ泣いていい?
「わーそうなんだー!クウトくん、見た目は弱そうなのに凄く強いんだね!」
さっきまでのもの言いたげな表情はどこへやら。アリーシャはニコニコ顔で俺の右腕に抱き着いてくる。嬉し恥ずかしいけどサラッとひどいこと言ってない?
だぶだぶのローブのような服装だったので気が付かなかったが、
小柄な割に意外に膨らみはあると右ひじが報告をよこす。うむ、引き続き情報収集に励むべし。
いやそれよりも
「いやいやいや!俺はまだ戦闘も魔法も何もできないぞ!」
そう言った!だっていきなり戦闘に立たされても困りますし。やめてください死んでしまいます。
「じゃあ今ならクウトくん襲い放題だね!」
アリーシャはさらにギュッと抱き着きながらとんでもないことを口走る。
「アリーシャ、その辺にしておきなさい!」
エリナが不機嫌そうに怒った。
「はーい」
笑いながら返事をしているアリーシャは何か考えてるようだ。
「クウト、話は戻るんだけど」
「本来は王宮などでもてなしを受けて旅立つのが普通なんだけど
ここに居るのはある意味ラッキーなのよ」
エリナはそういう。
「なぜだ?」
「確かに王宮で装備や仲間は集まるし、その後の援助なども国中で受けられる。
でも、危険は常に付きまとうのよ」
そうエリナは付け足す。
「危険?」
危険って何に対してだろうか。
それに答えるのはクレス。
「確かにそうなのですよ。私は以前エリナさん以外の異世界の方と旅をしたことがあります」
「したことがあるのか?」
「ええ、ですが、その方は亡くなられてしまいましてね」
「モンスターにやられたのか?」
「いいえ、王国の暗部に暗殺されてしまいました」
な・・に・・・?
暗殺だと・・・!
3人からいろいろ話を聞く。例えば異世界人の倫理と国の宗教が相容れないとか、
貴族たちの地位を守るために活躍しすぎると保身のためにそうするらしい。
男の場合は子孫を残すために様々な政策を行い、
子供が生まれたら用済みと消されることが多いとの事。
逆に女の場合は、ある程度の地位の貴族の側室にして飼い殺すことが多く、
叶わぬ場合はやはり毒殺などされてしまうらしい。
そうなると一つの疑問が湧いてくる。
「エリナはなぜここに居るんだ」
そう聞いていた。
「私の場合は、クウトと同じく王宮には召喚されなかったからよ」
「じゃあもう一つ、なぜ俺が同じだとわかった?」
そう続けると、エリナは俺のズボンを指さし
「だって、そのジーンズ、この世界にないもの」
そう答えた。
そりゃあそうか。
上着は物々交換で渡してしまったが、ジーパンはそのままだったな。
あの露天商はこれも欲しがったが、下半身丸出しにさせるのかと言ったら諦めてくれた。
下着をはいてるから丸出しってわけではないが、限りなくアウトに近いアウトだろう。
余談だけど、スマホやら財布やらは目覚めた時にはなくなってた。
異世界に持ち込めないようにおそらくあの幼女管理者によって没収されたのだろう。