運営の地雷原との奮闘記1
評価を貰えたりブクマが一気に数人増えたりPVが2倍になったり…これは一体…( ゜д゜)
本当に感謝であります!何が起きたんだとマジでびっくりしました。更に投稿意欲が加速される…
今回は運営回です。とてもアットホームな職場です。具体的には勤務時間が8時間という程度で徹夜もまずしないレベルでホワイトです。主人公のよくログインする時間帯は大体今回登場した人達が運営してることになります。
とあるビルの一室に起きた鶴の一声によりそれまで静寂だったその場に波紋が広がった。
「が…ガンテツが倒されました!」
「「「「「「なに〜〜!!!!????」」」」」」
「それは本当かっ?!あのお遊びで入れた負けイベントに勝ったのか?!だ、誰だ!?第2陣の誰かだろう?!」
「チーフ、落ち着いてくださ…「これが落ち着いてられるかぁ!」」
興奮しているチーフを鴨田が宥めるが失敗した。普段は温厚な人だがそれだけ衝撃的だったのだろう。そんなチーフに報告をもたらした猿渡が更に衝撃の事実を口にする。
「プレイヤー名は『チェイン』!しかも『自ら逆境に立つ者』を取得してます!」
「それって確か…」
「人気のない初期スキルしか取らなかった時の救済措置ですね〜」
「まて、不人気スキルのみでガンテツを倒したというのか?」
「でも不人気スキルの中には仕様の一部が判明されてなくて強いのに不当に扱われてるのもありませんでしたっけ〜猿渡さんガンテツ討伐時点のスキル一覧をお願いしま〜す。」
スキルのバランス調整を担当してる刈谷が疑問を持ち同じくスキルのバランス調整担当の東雲が飴を舐めながらその疑問に答え、その答えの確認を取る。猿渡はそれを受けスクリーンに画面を表示する。
「これがガンテツ討伐時点のスキル一覧です。」
「あ〜、やっぱり持ってたか〜《魔力伝導》。ってあれ?スキルが5つ以上ある…何で《演算》と《並列思考》持ってんの!?」
「お前が取り乱すのもなかなか見ないな。にしても《固定化》まで持ってるぞ。どうやらチュートリアルでスキルが取得できてしまってるらしいな。イベントのためのメンテナンス前に修正案件が発覚して良かったじゃないか。」
「いやそれは見て分かるよ!そうじゃなくて《演算》と《並列思考》は脳にかなりの負荷を長時間に渡ってかけないと取得できないスキルだよ?!チュートリアルで取得できるものじゃないからね!?」
「あ、なんかログを見てみると6時間ずっと鉄塊に《念動力》をかけてますね。」
「…!ちょっとその時の映像出して!!」
「え?はい。」
スクリーンに鉄の糸で何かしてる様子が映し出される。
「これは…何をやってるんですかね?」
「鉄塊を糸状にしてるな。糸にしてからもなんかやってるが。」
「…糸にこの時どんな風に力がかかってるかを断面図で出して。」
ブオン
「これは…はい?」
「なんでこんな複雑に力が発生してんだ?」
「これは《念動力》…いやでも…」
「《念動力》はこんな何個も複雑に力を発生はできない。刈谷君はそう言いたいんでしょうが理論上は可能なんですよ。全部脳内で物理演算の処理を行えるような人がいればですけどね。」
「そんな馬鹿な話があるのか?流石にあり得な…「あり得るあり得ないじゃなくてやってるんですよ。流石に完璧にはできないから四苦八苦してるようですが」
………あれだけ騒がしかった場を今度は静寂が包み込んだ。
「ただ1つ気になるのは《初期スキル成長速度上昇》が適用されたりランキング補正がかかったりしてるから《変形》から《固定化》を取得するのは分かるんだけど何で初期スキルでもない《デュアルタスク》が進化したんだろ?」
「え?えっと…なんか初期スキルからランキング補正抜いたぐらいの経験値をログでは取得してますね…」
「不具合だ〜ウボァ〜チュートリアルで取得したからか初期スキルと同じ扱いになってる〜」
「元々チュートリアルでスキルを取得できないように修正するんだ。仕事量は変わらん。」
「第2陣の殆どが来ても不具合無かったからプレイ鑑賞だけで終わると思ったのに〜」
「にしても《変形》させたままにして切れない糸を作るってのはよく考えたな。そして《変形》の仕様を修正しようとしても逆に《変形》が強くなるだけ、手の出しようが無い。こいつはこれからも何かやらかしそうだ…猿渡!マークだ!担当は発見したお前でいいか?」
「分かりました!」
「正式にプレイ鑑賞が仕事になってうらやま〜」
「無駄口叩いてないで早くやってくれ。」
コンコン
「失礼します。」
「お、虹村か。いつも通り早いな。深夜勤帯には2時間も早いぞ?」
「この仕事が自分の生き甲斐なんで。なにかありましたか?」
「期待の第2陣で1人マークしたやつが居た。あとはPKの中で称号のために第2陣狩りが横行してるぐらいだな。」
「PK達はその称号は取れそうですか?」
「無理だな。PKの合間に邪魔なMOBを倒しちまってるから『連続で』の条件が満たせてない。」
「ありゃりゃ。それじゃそのマークしたプレイヤーは?」
「それは今猿渡が監視して…「また『チェイン』がやらかしました!」おいおいまだ一日目だぞ…スクリーンに写してくれ!」
「……『チェイン』だって?」
チーフの言葉によりスクリーンに草原を走って虐殺の限りを尽くしているプレイヤーの姿が映し出された。
「『チェイン』はガンテツから『使えずのダンジョン』攻略の依頼のために『愚者の首飾り』を借りてそれを装備。その状態でPK蔓延る草原でプレイヤーを次から次へとキルしていってます。それにより取得した称号は次のようになっています。あとは第1陣の所持品とPKされたプレイヤーの遺品が大量に取得されました。」
ブオン
「あー!俺がネタに入れた称号!まさか本当に『糸』で取ってくれる人がいるとは…」
「おま!『仕事人』とか知らないと思ったらお前が入れたんかい!」
「俺が許可した。」
「チーフぅ!?」
称号担当の熊倉にツッコミを入れた同じく称号担当の荒垣がチーフに裏切られる。
「いやそんなこと置いといて他に話す事あるでしょ〜どうすんの?『殺人鬼』シリーズ全部抜かれちゃったけど。確かあれ『世紀の殺人鬼』を誰か取ると他の人の『殺人鬼』系の称号に模倣犯ってのが付いて効果無くなるんだよね?それ以降は称号自体が取得できなくなると。それで隠し効果で『世紀の殺人鬼』は他の称号の効果を強化する効果もあったよね?第2陣でもう全部開放されてたらまずいんじゃない?しかも他にも取得した称号も取りづらいとか一人しか取れないとかのせいで元から倍率高い称号多いし。」
「それは導入時点で分かってたことだから問題無い。というか仕方ない。ただもう開放されたのがびっくりなんだよな。どうやってあれらを開放したんだ?」
そんな疑問に猿渡が答える。
「えーと。ログによると【エア・サーチ】で居場所を見てそこから直接糸を伸ばしてキルしてるようです。あとはそれを走りながらやってるという事でしょうか…」
「…そうか。完全な地雷の【エア・サーチ】も《演算》と《並列思考》、そして持ち前のリアルスペックがあれば最強の探知魔法に早変わりか…」
それを聞いた魔法担当の伊藤が天を仰ぐ。
「あとはPKが草原に集まってたのとそいつらが周辺のMOBを狩りきってたから『チェイン』がMOBを狩らなくて良かったってのもありますね〜」
「あ〜!!」
「いきなり叫んでどうした荒垣。」
「さっき『使えずのダンジョン』を攻略するために『愚者の首飾り』を装備してるって言ってましたよね!?『愚者』を開放するかもしれません!」
「その『愚者』ってのはなんだ?」
「それは………」
「『風の友』取得してる上に『愚者』とかやばいことになるな…」
「てかそれ普通は取得できるような称号じゃないよね〜?何で入れたの?」
「設定作り込みの一環ですよ…NPCギルドには必ず一つ管理している特殊アイテムがあるって設定のために作ったアイテムと称号ですね…まさかNPCが貸し出すほど好感度を上げる人が居るとは…」
「ガンテツに勝った人だからね〜しかも不人気スキルのみで。ガンテツの性格ならかなり気に入りそうだよね〜」
そこにNPC担当の狛枝が気づく。
「待って、そういえばNPCギルドの特殊アイテムで思い出したんだけどさっきのPKからの遺品の中に第三の街の『魔法学園』で保管されてた『魔力視のモノクル』が混ざってなかった?」
「あ〜それなんかPKで唯一のトッププレイヤーである『アルファ』が前に襲撃して盗んでましたよ〜そのせいで懸賞金出てましたけど。」
「あれ確か検証班からは涎の出るようなアイテムだったんだけど『チェイン』みたいな奴に渡したら不味い気が…」
「なんかま〜た世界の設定を悪用してきそうですよね〜」
「OWAM世界の魔力の法則とかはサーバとAIが管理してるからな…どうなるか分からん。」
「だからその不確定要素である魔力を操れる《魔力伝導》は強いはずなんですけどね〜」
東雲のそんな考察の中、今度は虹村が声を発した。
「人外レベルの本人スペックに不人気スキルを使用してて普通は知らない仕様を悪用してプレイヤー名が『チェイン』…確定だ。………あの、チーフ。俺そいつのこと知ってます!」
「なに?知り合いか?」
「いえ、俺ここに来て半年じゃないですか。その前に働いていたここのライバル社のゲームで有名になったプレイヤーです。そこでは『地雷原』の異名で呼ばれてました。」
「地雷原?何でだ?」
「地雷スキルや地雷アイテム、地雷武器など地雷や不人気のものを用いて無双したプレイヤーだからです。そんなプレイスタイルとは別に『そいつに近づくな』という意味もあったそうですが。」
「…なるほど、なら俺らもそれにあやかって『地雷原』と呼ぶことにしよう。みんなも聞いたな!やらかしそうというレベルではなく既に他のゲームでやらかしてるやつだ!色々修正とかなんかで仕事が増えるかもしれんから気をつけるように!」
「まあ逆に今までが仕事少なかったレベルだしええやろ。」
「それもそうだな。」
「って、なんか同じ指輪を複数装備してますよ!?」
「仕事だぞアイテム班兼設定把握班。」
「もう他のプレイヤーが作ってる奴の確認でいっぱいいっぱいなんですけど!?」
「よし、なら上にあと一人二人増やせないか持ちかけよう。元々アイテムが無限にあるようなものなのに今まで鶴野一人でやってたのがおかしかったんだ。OWAMの売りでもあるし通るだろう。取り敢えず『地雷原』を優先でやってくれ。」
「ヤッターーー!」
ワイワイガヤガヤ
(みんな気負うことなく仕事ができてるようでよかったが…なーんか嫌な予感がするんだよな…)
そんなチーフの予想は外れていなかったことがこの数十分後に発覚した。
「はぁ〜〜??!!『地雷原』!またまたやらかしました!」
「スクリーン!」
ブオン
「あ、これ『使えずのダンジョン』のボスだわ。もしかしてソロ攻略が議題かしら?作成者で言うのもあれだけどよくあれを倒せたわね。」
「流石楽楽さんですがそれよりも最後が問題です!」
「?」
楽楽と呼ばれた女性が予想をし、その答え合わせがスクリーンに出る。リッチが魔法陣により運ばれる様が映し出された。
「ナニコレ草生える。」
「見事な運送ね…」
「《魔法陣》ってこう使えたのか…って」
「「「「「「「なんじゃこりゃ(なにこれ)!!!!????」」」」」」」
「スキル班!魔法班!」
「はいは〜い、多分こっちの問題だと思いま〜す。ちょっと待っててくださ〜い。………ちょっと刈谷く〜ん。魔法陣の範囲計算式間違ってんじゃ〜ん。」
「なに!?すまない…」
「あの〜『最高火力』の記録更新されてますよ?」
「あ、そなの?ちょっと正しいダメージ送るね。ってダメージ量の桁が違うわ。草生える。」
「…はい。来ました。あ、この正しいダメージでも大幅に更新はされてるので本人にお詫びメールを送るだけで対応は済みそうですね。僕が送っておきますね。」
「あ、待って猿渡くん。確か私のダンジョンってソロ攻略称号を特別に用意しようって案が有ったわよね?それお詫びとして導入できないかしら?」
「んじゃメモに書き置いてた気がすんで俺が秒で用意しますね。猿渡がお詫び文書いてる間に作るんでその旨メールに書いといて。」
「分かりました。」
「あ〜にしてもメンテ情報で《魔法陣》の下方をしたって聞いたら更に使われなくなるな〜」
「元々使うやつが居なかったから変わらんだろ。あんなふうに使えるのは『地雷原』だけだ。」
「そうだけどさ〜」
そうやって夜はふけていく…
その後またも『地雷原』が桁違いのダメージを出し、最終盤で取得予定だった称号を取られたことで一室を騒然とさせたのは言うまでもない。
望月グループ
OWAMの運営をしてる会社グループ。
ゲーム部門のトップである『望月 真白』は所謂御曹司でゲーム会社ではあり得ないようなホワイト運営をしている。勤務時間を『昼勤帯』『夜勤帯』『深夜勤帯』と8時間ずつ区切り交代しながらゲームの運営をしている。最初は大赤字を産んでいたがポケットマネーの力で補填。ライバル社からその魅力的な勤務条件で優秀なプログラマーを大量に引き抜く。また、ポケットマネーを使い最新技術で作られたスパコンやAI、設備を導入。設備、人材、環境を整え一躍黒字運営となった。
チーフ
温厚で部下思い、上のホワイト思想もうまく使い部下から親しまれている。但しゲームの事になると興奮して暴走する。NPC担当の狛枝曰く『ガンテツ』は暴走してる時のチーフをイメージしたとのこと。
刈谷・東雲
OWAMのスキル担当。刈谷が真面目なのに対し東雲はいつも飴を舐めてる。ただ仕事は東雲の方が優秀。というか東雲は皆が認める天才で新しい事実に気づくのは東雲が多い。
猿渡
特に担当の名前は無いがOWAMで起きた大きな出来事など把握する言うなればOWAMの観測者。また雑用もこなす。新人だが仕事は早い。
熊倉・荒垣
OWAMの称号担当。熊倉は時たま趣味に走りがちだがチーフもよくそれに乗る。OWAMのネタ称号は大体こいつが原因。荒垣は不憫枠。
虹村
本来は『深夜勤帯』だが仕事が好き過ぎていつも早く来る。担当は猿渡と同じ。前の職場での『チェイン』の被害者。
楽楽
本名は違うがいつも楽楽と呼ばれている。実はOWAMのMOB担当。OWAMのダンジョンは色んな人がデザインしているが満場一致で彼女のダンジョンが難しいと言われている。基本レベル制限ありのダンジョンは彼女が作ったダンジョンである。ボスのデザインも手掛ける。
狛枝
OWAMのNPC担当。主要NPCは大体こいつが作った。TRPGが趣味。そのときは大体GMをやらされる。記憶力が良い。
鶴野
OWAMのアイテム担当兼OWAMのサーバとAIが作った世界の物理法則(特に魔力関係)の把握担当。一番忙しい。担当が2つの理由は物理法則の確認に一番適してるのがアイテムの仕様となぜそれができたのかを理解するのが1番だったから。増員予定。
伊藤
OWAMの魔法担当。ぶっちゃけ仕事があまり無い。なので普段はイベントの準備や鶴野を手伝ったりする。メンテもこなす第二の雑用。




