1話
イレスは魔法が使えなかった。それは、魔法が日常生活で使われているこの世界においてあってはいけない欠陥だった。なぜイレスは魔法が使えないのか、それは魔法を使う時に消費する魔力という物の保有量が少なかったからだ。しかし、そんな欠陥魔法使いもいまでは偉大な魔法使いとして人々に語り継がれている。魔法も使えないイレスが偉大な魔法使いになった理由、それは彼が長い年月をかけて作った魔法にあった。
刻印魔法、術者本人の魔力を使わずに空気中の魔力を使って発動する魔法。イレスは自身の魔力に依存しない魔法を作ることができたのだ。当時は誰も思いつきもしなかった自分以外の魔力を使うということに人々は驚きを隠せなかった。
この世界には魔法技術の発展に大きく貢献した者に何でも神が一つ願い事を叶えてくれるという物があった。イレスは何を願ったか、それはイレス以外には誰も知らない・・・・
~イレスの死から30年後~
「これが、偉大な魔法使いイレスについてのお話だ。さぁ、本題のワイバーンの対策についてだ」
冒険者を取りまとめるギルドのメインフロアの一角に三人はいた。リーダーである魔法使いのエルフ、戦士のドワーフ、盗賊の獣人の亜人パーティーである。
「その偉大な魔法使いのイレスは何を願ったんだろうね~、私だったら一生暮らしていける位のお金かなぁ」
頬杖を突きながら盗賊は考えていると、エルフに対策を考えるように注意された。
「俺なら美人な女と飲みきれないくらいの酒だなぁ!!」
ガハハハと豪快に笑うドワーフ、それを獣人は冷たい目で見ていた。
「ほらほら、いつまでたっても対策を練れませんよ?久しぶりの大きな依頼なんですから、よく練らないと」
彼らはここ最近、大きな依頼を受けられていないために簡素な飯しか食べられていない。もともと贅沢が好きな三人なので久しぶりにいい飯が食えると喜んでいたのだった。
その後、無事にワイバーン対策会議は終わった。