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DT ~世界を守る魔法使い~

作者: tene

 俺は今年で30歳を迎える。

 手元には一枚の、赤い手紙。

 2013年末に、特定秘密保護法が可決した時から、この日が来るのは決まっていた。

 ついに、来るべき日が来たのだ。


 手紙にはこう書かれている。



 召集

 ―童貞魔導部隊―




 皆、もう気が付いているとは思うが、一応説明しておこう。

 童貞(以下DT)は、30歳まで守り抜くことによって、先祖返りを起こし、魔法の力を得る。


 魔法の力とは何か。それは、神の力だ。




 ――最初にDTが居た。当たり前だ。だって一人しかいないんだから。

 そしてDTは、あんまり他人には言えないある行為によって、世界を作った。


 DTは光を作り

 水を作り

 大地を作り

 空を作り

 植物を作り

 動物を作った


 そしてDTは悟った。

「6回以上は相当ハードだ。6回の後、一日休むようにしよう」と。

 こうして「週」という概念が生まれた。




 しかし、神はある時をきっかけに、その力を失ってしまう。

 禁断の果実……「女性」である。


 神はDTとともに神としての力を失い、我々人類の祖先となった。

 こうして、混沌の時代が幕を開ける……




 七つの大罪と呼ばれる欲望たちが渦巻く混迷期。

 しかし、人々に希望は残されていた。


 人間の最も強い欲求の一つ「性欲」。

 その性欲に30年間打ち勝つ事のできた、本物の勇者。

 そう、高校卒業までには、そのほぼすべてが悪魔たちによって根絶やしにされてしまうという、伝説の勇者。

 彼らだけが、大祖先「神」の力を開花させ、世界を担う魔法使いとなることができるのだ……!




 世界には解明されていないことが多い。

 たとえば石油。

 化石燃料ともいわれ、一説には堆積した恐竜の化石が、時と圧力を経て変化したものだという。


 しかし、本当にそうか。

 我々の生活を担っているあれだけのエネルギー、果たして恐竜の死骸だけで生成かのうなのか。


 残念ながら、それだけでは足りない。


 では、石油とは何か。

 それはDTの満たされぬ欲望。ゆえに石油は黒く、臭い、纏わりつく。

 創生から今日に至るまでのすべてのDTの欲望が今、世界を動かしている。




 DTの暗躍は化石燃料だけではない。

 90年代にかけての目覚ましい中国の経済発展。その裏にはなにがあったのか。賢い諸君なら、もうお分かりだろう。


 ― 一人っ子政策 ―


 この政策によってパートナーを見つけられない男性が増え、結果DTが増加。中国はそのすべてを国家政策につぎ込むことで、見事な経済発展を遂げたのだ。




 では、我らが日本はどうか。

 残念ながら、日本は自由恋愛国家。そして統計上、自由恋愛国家での自然DT発生率は、ほぼ0%・・・・であることがハッキリ・・・・している。当たり前だ。性欲が人間の根源的な欲求である以上、自由恋愛ならばDTを守り抜くことは・・・・・・・・・・不可能だ・・・・


 しかし、DT無くして国家の発展はありえない。DTは貴重な資源だからである。


 国家はそれをどのように解決したのか。

 一つに、国民への嗜好誘導だ。魔法を使うには、エネルギー率の高い体や、逆に骨格の割合が多い体構造が不可欠。要は、デブかガリが向いている。また、背は低い方が良い。

 国家は魔法に向かない、高身長で筋肉質な人間が恋愛しやすい環境を作り、魔法の適性が高い人間たちのDTを守った。


 しかし、それだけではDTたちの欲求が溜まってしまう。いくら彼女ができないと言っても、お店などでDTを失ってしまえは魔法の才能は開花しない。どうしたらいいだろうか。

 そこで流行させたのが、アニメとゲームだ。特に、エロゲーと呼ばれる高性能欲望発散装置の開発には、莫大な補助金が出されており、ゆえに補助金目当てに作られる会社は後を絶たないという。




 こうして今、日本には大量のDTが生まれつつある。日本の将来は明るいだろう。


 しかし、これだけDTが増えてくると、国家単位のプロジェクトが動いていることが明るみに出るのも時間の問題だ。そうなれば、人権問題に発展し、すべてのDTは喪失されてしまうだろう。


 それを防ぐために作られたのが「特定秘密保護法」である。

 これにより、万が一この仕組みが明るみに出ても、国家はその質問を受け流し、DTたちを守り抜くことができるだろう。




 そして今、俺の下にはDTの召集令状が届いた。

 俺は同封だった、上記の説明が書かれた紙を読んで涙した。

「ああ、俺に彼女ができなかったのは、そういう理由だったのか」


 けれど、俺は国を恨んでなんかいない。そう言う理由なら仕方がない。日本を、いや、世界を救うには、一部の才能ある人間が犠牲にならなければならないんだ。

 そう、そのために与えられた、俺の才能。DT。これからも大切に守らねばならない。



 俺たちの目下の任務は、2017年10月、南極に衝突すると算出された惑星「二ビル」との、衝突回避。簡単な任務ではない。しかし必ずやり遂げてみせる。だから君たちは安心して見ていてくれ。そして、俺たちの代わりに、幸せな家庭を築いてほしい。




 俺たちはDT。世界を守る、魔法使いだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「DTのまま30超えると魔法使いになれる」というネタをあえて曲解した展開で面白かったです。
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