悲しき戦い 中編
暗黒の炎にエンドアの街が飲み込まれてゆく。
傷ついた民達は切り立った岩山を懸命に登っていた。
「もうダメだ。逃げ切れっこねぇ」
傷ついた老人がへたり込んだ。
「ねぇお母さん、私達死んじゃうの?」
幼い子供に尋ねられた母親は思わず泣き出した。
民たちの間に絶望の重りがのしかかってくる・・・。
その時どこからか美しい歌声が聞こえてきた。
「巫女ねえ様、歌ってる」
子供たちがパドメの周りに集まってきた。
民たちもパドメの美しい歌声に耳を傾けた。
(ヒーリングソング・・・魔力などほとんど残っていないのに)
アルルは悲しそうにパドメを見つめた。
「さぁみんな、この山を越えたら隣の国のお城が見えます。」
「よし、行こう」
パドメの治癒魔力により再び民たちは歩き出した。
その姿を見ながらパドメはアルルに言った。
「アルルさん、貴方はみんなを守って。私の最後のお願いよ」
パドメは神槍を持つと、暗黒の炎が燃えさかる街へ向き直った。
「待テ!オマエ独リデ何ガデキル!」
アルルはパドメを引きとめようとした・・・が、鎖に巻かれたように体は動かなかった。
「グ・・ヌウゥゥ・・・」
女神ウルディアの誓いの魔力。騎士の命には決して抗えない誓い・・・。
パドメは寂しそうに微笑み、ゆっくりと炎に向かって歩き始めた。
「待ッテクレ!頼ム!俺モ連レテ行ッテクレ!」
アルルは叫びながら思った。
この少女に万が一のことがあったら・・・
(自分も生きていない・・・生きていてもしょうがない・・・だから・・・頼むから・・・)
アルルは泣きながら叫び続けた。
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オークの大軍が押し寄せてくる。そこに鎧をまとったスズミヤ卿が立ちはだかった。
「せいッ!」
スズミヤ卿が斧を振り下ろすと、オーク達は次々に真っ二つになり倒れていった。
「我が君、エンドアが陥落したとの知らせが」
「そうか」
スズミヤ卿は闘斧を降ろすと国境へ目をやった。
「斥候隊が向かったのはあそこか」
「はッ」
「全軍に退却命令を出せ。救出は私が向かう」
スズミヤ卿は、2・3の騎馬武者を連れ、エンドアの国境へ向かった。
しかし解せぬ――
スズミヤ卿は考えた。
名誉を重んじる妖魔の皇族家が暗殺などするだろうか?
結果、もし妖魔国が勝利したとしても謀殺の徒として汚名は終生ついてまわろう。
万が一、敗戦にでもなろうものなら・・・。
騎馬武者達は暗黒の炎が燃えさかる街へと駆け抜けていった。




