悲しき戦い 前編
スズミヤ卿率いる騎馬武者達は国境付近に陣を構えていた。
そこに忍びの騎馬が駆け戻ってきた。
「なに、アドリス殿が謀殺されたと?!」
スズミヤ卿は思わず声を上げた。
「は、シルグムント国内は浮足立ち混乱状態です」
武者たちに動揺が広がる。
「我が君、事が敵に知れるとこの機に乗じられまする!」
スズミヤ卿は目を閉じ少し考えて言った。
「この変事、恐らく妖魔軍の仕業。既に敵は総攻撃を始めておろう」
「くっ・・・!」
スズミヤ卿は闘斧を手に取り言った。
「斥候隊はまだ戻らぬか?」
「は、恐らく妖魔軍に手にかかったものかと・・・」
「これより斥候隊を救出する!その後にエンドアへ向かうのだッ!」
「御意ッ!!」
スズミヤ卿の力のある声が武者たちの動揺を吹き払った。
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暗黒の炎を眺めながら、メリュジェーヌは想いにふけっていた。
(なぜあのようなことをなさったんですの?)
(わしは指示などしておらん。誰かが勝手にやったことだ)
(え・・・お父様ではないんですの?)
いったい誰がこんなことを・・・謀殺のような下衆な手段を使うなんて――
メリュジーヌは憂鬱そうに溜息をついた。
「お嬢様ァ~。エンドアの結界を突破しまし・ター!」
オークが下品な笑みを浮かべながらメリュジェーヌへ言った。
「お嬢様の魔力をもってすれば共和国の騎士団なんぞ屁のカッパ、ゲヘヘ~」
メリュジェーヌは卑下した目でオークを一瞥すると、エンドアへ向かって歩き始めた。
自分のやっていることは正しいのだろうか?――
人間の力では決して消えることのない暗黒の炎に向かいながら、メリュジェーヌは自問を続けていた。




