メリュジェーヌ
「シルグムントの国境を制圧しまし・ターッ!」
屈強なオークが鼻息荒く大声を張り上げるのを横目で見ながら、メリュジェーヌは窓の外を眺めていた。
妖魔国皇族のしきたりでは、女であろうと政治や軍事に参画しなければならない。
分かってはいるが、まだ16歳のメリュジエーヌには戦争よりドレスや薔薇の香りの紅茶の方が大切だった。
「メリュジェーヌよ」
ヴェルフェゴール家当主であり父であるシディウスが声をかける。
「国境の先にはエンドアがある。ごく小さな国ではあるが竜騎士が守る手強い国だ」
「ええ、お父様。」
「オークや使い魔だけでは心もとない。そなたが指揮を執り、その地を制圧するのだ」
「私が?!」
「お前ほどの魔力の持ち主であれば他愛もないはず」
「...是非は無いのですわね」
ふふん、とシディウスは冷徹な笑みを浮かべながら言った。
「よく分かっているな。敵国の兵士、民の生死は問わん。1週間以内に我が国旗をエンドアに立てよ、メリュよ」
そう言うとシディアスはメリュジェーヌに背を向け部屋を出て行った。
「ふぅ」
メリュジェーヌはため息をついて、また窓の外へ目をやった。
いつの日からこのような血生臭いことが続くようになったのだろう――
昔は人間と妖魔は相容れない存在でありながらも共生してきたのに――
「ふぅ」
またメリュはため息をつくと憂鬱そうに遠くで燃える黒い炎に目をやった。




